モディ首相訪日、「大成功」と印各紙 “ガンジーに捧ぐ”と首相も手応え

 日本を公式訪問していたインドのモディ首相が3日、帰国した。インド各紙はこぞって訪日を「大成功」と伝えている。特にインフラ整備や環境浄化費用として5年間で350億ドル(約3兆5000億円)という巨額な援助を引き出したことは、大きなインパクトを与えたようだ。

【成果を「ガンジーに捧ぐ」】
 安倍首相はモディ首相との共同声明で、この先5年間でインドへ官民合わせてODAを含む計3.5兆円の投融資を行うことを表明した。主にインド国内のインフラ整備に使われる。『インディアン・エクスプレス』は、この日本の援助を利用して、ヒンズー教の聖地でモディ首相ともゆかりの深いインド北部のバラナシ(ワーラーナシー)を京都型の「スマートシティ」として再開発したり、同地を流れる“聖なる川”ガンジス川の浄化が行われると報じている。

 モディ首相は、この援助を引き出したことを「非常に大きな成果だ」と強調。日本の資金と技術で自然環境や都市環境の「浄化」が進むことについて「最も強く“清廉”を望んだマハトマ師(「インド独立の父」マハトマ・ガンジー)に捧げたい」と語ったという(『タイムズ・オブ・インディア』)。

 『インディアン・エクスプレス』によれば、モディ首相は、インドは今後日本のビジネスマンを「レッドカーペットで迎える」と発言。日程を終えた後の記者会見では、日印の絆を「Fevicol(インド製の強力接着剤)よりも強い」と表現したという。『タイムズ・オブ・インディア』は、「私の最大の喜びは日本が我々を信頼してくれたことだ」という発言を取り上げている。

【超親日的な“インディアン・ギャグ”のコラムも】
 『エコノミック・タイムズ』に掲載されたアヌバブ・パル氏のコラムは、その超親日ぶりと独特のギャグセンスが目を引く。同氏は、劇作家・脚本家・作家で、スタンダップ・コメディアンとしても活躍するインドのマルチタレントだという。相当な親日家でもあるらしく、モディ首相の訪日で日印関係が深まったことを「日本とのパートナーシップの可能性は無限大だ」「ようやく我が国と日本が結びついた。本当に嬉しい」と手放しで喜んでいる。

 同氏は、「これからはもっと日本の深夜番組が見られる」「Croma(インドの家電量販店)が6つは入る世界最大のヨドバシアキバがやってくる」などとインディアン・ギャグを交えながら、ハイテンションな筆致で親日ぶりをアピール。「カワサキとヤマハのバイク抜きにはボリウッド(インド映画)・スターは女の子たちを夢中にさせられない」「タタ・ドコモ(NTTドコモのインドでのブランド)がなければ、このコラムは新聞に載らなかった」などと、既に日本抜きではインド人の生活は成り立たないと語っている。

 さらに、「(インドでは高級車の一つになっている三菱自動車の)パジェロの窓を割るのをやめよう(=日本車を車上荒らしのターゲットにするな)」「忍者ハットリくんは既にヒンズー語をしゃべっている。ボリウッド版ポケモンを作る時がきたようだ」などとギャグを連発し、「私は日本的なものを探す旅を続ける」と宣言。読者に「さあ、(親日の)流れに乗ろう」と呼びかけている。そして、インドが「良き日々が訪れる土地」との異名を持つことにかけて、日印が力を合わせれば「良き日々が訪れる日出ずる国になれる」と結んでいる。

【「バランス外交」で中国とも友好関係を】
 パル氏のコラムとは対照的に、カンワイ・シバル元外務大臣はシリアスな筆致で持論を展開。主に経済分野では中国とも良好な関係を目指す「バランス外交」を提唱する。

 同氏は、『ヒンドゥスタン・タイムズ』に寄せたコラムで、「インドはどちらか一方を選ぶ必要はない。軍事的には対中国で日本と協調できるし、中国とは貿易、エネルギー、国際機関の改革、テロ対策などで協力すれば良い」と記す。一方、モディ首相訪日を経てさらに強化された日印の防衛協力関係については、「パキスタンと同盟に近い関係を結び、反インド的姿勢を取る中国に非難する資格はない」と釘を差している。

 また、モディ首相訪日に合わせ、日本は1998年の核実験を受けてインドの航空宇宙開発機関など6機関に課していた経済制裁を解除した。シバル氏は「これにより、防衛技術の共同開発の門戸が開けた」と歓迎。日本製のUS2飛行艇の購入が決まったことについても「インドにとっては軍用機として獲得したことに大きな意味がある」と論じている。一方、原発などの民間の原子力開発の分野では、今回も日本との具体的な協力関係は結べなかった。同氏はこれを「特筆すべき失望」と述べ、「日本は早急に我が国に対する戦略的不平等を改めるべきだ」と批判している。

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Text by NewSphere 編集部