また反日… 中国、今年3度目の“戦争”記念日制定 “共産党の常とう手段”と海外報道
中国国営新華社通信の8月31日付の報道によると、中国の全国人民代表大会(全人代)常務委員会は日中戦争などで犠牲となった「烈士」をたたえるとして、9月30日を「烈士記念日」とする法案を採択したという。
全人代常務委員会は今年2月にも「抗日戦争勝利記念日(9月3日)」、「南京大虐殺犠牲者国家追悼日(12月3日)」を決定している。今回で3度目の記念日の制定に、この件を報じた中国メディアと海外メディア間の温度差が浮き彫りになった。
【烈士記念日はあくまでも国内イベント】
同通信社によると、中国民生部(旧厚生省に相当)の李立国部長は「愛国主義、集体主義精神及び社会主義モラルを養い、チャイナドリームを実現するための刺激」と、「烈士記念日」の目的と意図を語っている。
また、なぜ9月30日に決めたかについて、同部長曰く「1949年9月30日は、人民英雄記念碑の基盤を築いた日であり、国慶節(建国記念日)の前日に定めたことで、烈士を忘れるなかれ」と、国慶節でも忘れないよう戒めのニュアンスを含ませているようだ。あくまで国内向けのイベントであることを強調している。
なお、ここで言う「烈士」とは、「第一次アヘン戦争(1840-1842年)後、つまり近代歴史以降、民族の独立や国家繁栄のため犠牲となった烈士」を指すようだ。しかしながら、アヘン戦争の当事国であるイギリスにも感情が向けられてもおかしくないのに、なぜか「その感情がまっすぐ日本に向けられている」とUSAトゥデイは指摘している。
新華社通信によると、烈士記念日を「記念日」として制定する声はなんと2005年から検討されており、近年各界の人士や人民から支持を得て実現に至ったという。
【反日活動で一挙両得、国内統制と日本へのけん制】
USAトゥデイは「日本を見据えて、烈士記念日を仕組む」と題した記事を掲載。AFP通信もこの件を報じている。
中国が今回の「烈士記念日」を国内イベントの一つであると主張する一方、USAトゥデイとAFPは、国内世論の統制と日本へのけん制という見方をしている。「中国政府のこれらの動向は、国内で反日感情を高め、ナショナリズムと戦争被害者意識を利用することで中国共産党に対する人民の支援を確立する狙いがある」とUSAトゥデイは報じており、「中国当局の常とう手段」と見ている。
AFPも同様の論調で、「中国共産党は、中国国内を統制するためナショナリズムを何十年も利用している」と中国政府の思惑を報じている。また日中戦争(1937-1945年)にも触れ、対日感情の根が深いのでは、とも指摘している。
【好きな番組が見られないと不満の声も、今月は反日ドラマだけ】
USAトゥデイによると、今月、中国で最も人気のあるテレビ局は、当局の指導により、反日ドラマを放送することになっていると中国のタブロイド紙、北京ニュースが報じた。主要な衛星放送局は、戦争で活躍する英雄(共産党員)を扱う典型的な反日ドラマを9月中流すという。
一部のネットユーザーからはお気に入りの番組が見られないという不満の声もあがっているようだが、より深い意味で当局の方針に反対する人物もいる。政治評論家でもある中国人民大学の張鳴(Zhang Ming)教授は、これら政府強制による反日ドラマについて「反日感情を引き起こし、中国人の理性を失わせる。それは改革開放にとって良いことではない」、と大手マイクロブログ「新浪微博」に書き込んでいる。
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