韓国の産経“狙い撃ち”に英誌困惑 韓国紙の引用でも名誉毀損疑惑
セウォル号沈没事故が発生した日に、朴槿恵(パク・クネ)大統領が「男性と密会するため、7時間所在不明になっていた」という噂を報じた産経新聞の加藤達也ソウル支局長が、「名誉棄損」の告発を受け、ソウル中央地検から事情聴取を受けた。韓国メディアと、英エコノミスト誌の報道を紹介する。
【度を越えた冒涜】
東亜日報は、産経に批判的だ。同紙は、産経の「記事の出処の中心は証券街の情報誌だ」とし、ともに「引用した朝鮮日報のコラム」と同様、その類のものが「ニュースのソースになれないのは、言論人には一種の常識だ」と非難している。また、記事は「朴大統領が独身女性であることを念頭に置いた女性卑下の性格が強い」とし、産経の「韓国冒涜は度を越えた」と憤る。
【説明は不十分】
一方中央日報は、「問題の7時間」は、朴大統領は青瓦台(大統領府)におり、与党議員を通じて「電話あるいは書面での報告があった」という青瓦台の発表を報じているが、「問題は、対面報告や大統領が主催した会議がなかったという点だった」と指摘。政治利用される「セウォル号論争には、もう少し多くの事実が提供されなければならない。それでこそ噂や怪談がおさまる」とした。
聯合ニュース(英語)は、「事故時大統領はオフィスにおり、報告を受けていた」との広報首席秘書官の発言を報じた。しかし、「実際どこにいたのか、彼女が本当に報告を読んだのか、誰と話し合ったのかなどを示すものは、何もない」という野党議員のコメントも掲載し、青瓦台の説明に十分な裏付けがないことを示唆した。
【産経は嫌い】
エコノミスト誌は、名誉棄損の告発は、多くのアナリストを困惑させたと指摘。加藤氏は韓国の情報元だけを注意深く引用していたからだという。
同誌は、今回検察が動いた理由として、「韓国政府は我々が嫌い」だからと推測する産経のある社員のコメントを紹介。産経は右派の新聞として、河野談話を覆そうとしており、「慰安婦」は「売春婦」だと呼びたがる政治家が意見を述べる、公開討論紙になっていると説明している。
同誌はまた、この件は「両国の公開議論が愛国主義者の報復的言い争いにどのように陥っていくかを示している」とする朝日新聞の元ワシントン特派員、水野孝昭氏のコメントも紹介。水野氏が、安倍首相の元で日本のメディアが「より浅く、表面的になった」と指摘しつつも、今回の韓国の対応は、産経の支持者の怒りを掻き立て、予想通り支持者は憤りの反応をみせたと嘆く。
日本のメディアでは、保守の学者やコメンテーターが、言論の自由への攻撃を非難し、韓国の国際的イメージが悪くなると警告。TVの評論家は、韓国の今回の対応を北朝鮮と比べたりもしている(エコノミスト誌)。
日韓は、毎年終戦記念日(韓国では「光復節」)頃に、よく揉めると述べるエコノミスト誌は、今年も例外ではなかったとする。真夏の「口論」はしばらく続きそうだ。