中国、自らの首を絞める? 日本2社に48億円の制裁金、中国企業に悪影響の可能性
自動車用ベアリング(軸受け)大手の日本精工とNTNは19日、中国の独占禁止法当局から制裁金の支払いを命じられたと発表した。中国国家発展改革委員会(NDRC)は、2社に独占禁止法に違反する行為があったとして、それぞれ約29億円と19億円の罰金を科した。
【独禁法違反初めての厳しい処罰】
価格の監視をするNDRCは8月、日本企業12社の調査を完了。違反企業には罰金を科すと予告していた。
日本精工は、違反については自社による内部調査に続き、NDRCによる価格操作容疑の調査に全面的に協力した、としている。「株主の皆様、お客様をはじめ、関係者の皆様には多大なご心配をおかけすることになり、深くお詫び申し上げます」と謝罪をした。同社は、支払いが年間の事業見通しに影響するかは、まだわからないとしている。
日本精工は、ベアリングの製造で世界最大の企業のひとつだ。同社の2013年度の中国での利益は、新型車の発売と自動車製造業の堅実な成長のおかげで1672億円と、前年の914億円から83%も増加した(ウォール・ストリート・ジャーナル紙)。
日本精工への罰金は、中国国内の日本企業としては初めてとなる、独禁法違反による厳しい処罰だ。5月には、ニコンが制裁金支払いを命じられているが、金額は170万人民元(約2855万円)だった。
【海外企業を締め出そうとしているではないか】
中国は、独禁法違反について監視を強化していて、今のところ少なくとも海外の自動車企業7社に、価格を下げるよう圧力がかかっているようだ、とブルームバーグは報じている。NDRCは、自動車部品メーカーに加え、自動車本体を製造する海外企業の製品価格、アフターケア、交換部品についても目を光らせている。このような環境の中、フォルクスワーゲン、ダイムラー、トヨタが7月から中国での価格を下げると発表した。違反調査に、中国国内の海外企業の緊張は高まっているようだ。
中国商務省の沈丹陽報道官は18日、一連の調査は「外国企業排斥ではない」と述べた。当局は、市場の要求に従って調査を行い、消費者の利益を守ることを目的としていると説明している(ブルームバーグ)。
しかし、フィナンシャル・タイムズ紙によると、一部のアナリストは、NDRCの調査により車と部品の価格が抑えられることで、本当に中国の利益になるのか疑問に思っているようだ。自動車およびパーツの値段が下がることによって消費者は恩恵を受ける一方、輸入車や海外企業との合弁会社に国内の市場シェアで遅れをとっている中国の自動車企業は、さらに苦しい立場に立たされるからだ。
招商証券のアナリスト、ワン・リュウシェン(Wang Liusheng)氏は、「輸入車や合弁企業の車は、高い利益率を享受している。しかし、独禁法の調査は、販売価格を引き下げ中国国内の自動車企業により圧力をかけることになるだろう」(フィナンシャル・タイムズ紙)とみている。
【違反は中国国内だけではない】
中国の独禁法では、当局が企業に年間収益の10%ほどの罰金を科することができる。日本精工への罰金は2%以下で、独禁法の内容からすると比較的軽度だ、とウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じている。
コンサルティング会社オートモティブ・フォーサイトのエール・チャン(Yale Zhang)氏は、2%であっても大きな金額だとし、制裁金の割合は、それぞれの企業がどのように当局と交渉するかによるだろうとみている。「自動車メーカーが問題に誠実に対処していると中国当局がみなせば、罰金はわずかで済むだろう」(ウォール・ストリート・ジャーナル紙)
また、今回の日本精工への罰金は、最近、世界各国の規制当局が同社に対して行っている一連の処罰のひとつだ、と同紙はみている。欧州委員会は3月、6240万ユーロの罰金を科した。1月にはカナダが450万カナダドル、アメリカは2013年9月に、6820万ドルの制裁金支払いを求めた。なお、日本精工は2013年、日本でも独禁法違反で制裁金の支払いを命じられている。