安倍首相に試練 ロシア、北方領土で軍事演習 日露関係の行方に海外メディア注目
ロシアは12日、極東の島々で大規模な軍事演習を始めた。演習は、日本が領有を主張する、択捉・国後島を含む地域で行われている。
日本外務省は、東京のロシア大使館に強く抗議。「到底受け入れられない」「非常に残念だ」と述べた。
ロシア側は、今回の軍事演習は通常の訓練で「日本側が不安を示す理由は見当たらない」としている。
米国務省のマリー・ハーフ副報道官は定例の記者会見で、北方の島々の領有権は日本にあるとの認識を示したが、演習についてはコメントしなかった。
【北方領土での大規模な軍事演習】
12日から始まっている演習では、1000人以上の兵士、5機の攻撃用大型ヘリコプター(Mi-8AMTSh)、約100台の軍用車両が動員されている(RIAノーボスチ)。
ブルームバーグは、世界最大の国土、1億4300万人の人口と2兆ドル規模の経済を有する国が、冷戦後最大となる軍事力の立て直しに着手している、と報じている。
中国国営新華社通信によると、ロシア外務省は13日、極東での軍事演習は周辺国への脅威ではない、と説明している。また、ロシア外務省情報出版局のマリヤ・ザハロワ副局長は、「ロシアは、自国の領土内で演習を行うことができる。日本の外務省の抗議は不当だと考えている」と述べた。
【日露関係の緊密化を図る安倍首相】
第二次世界大戦後、日本とロシアは未だに平和条約を結んでいない。北方領土問題が、両国の平和条約締結の障害となっている。ただ、経済的関係は強まっている。国際通貨基金(IMF)の調査によると、両国間の貿易は、2003年から2013年までの10年間で6倍以上になった。また、2003年にはロシアにとって12番目の貿易相手であったが、10年後には6番目に上昇した。
安倍晋三首相は、北方問題解決と日本へのエネルギー資源輸入を拡大する目論見で、ロシアとの結びつきを強める外交を展開してきた。同首相は、過去10年間ではロシアを訪問した初めての首相だ。これまでにウラジーミル・プーチン露大統領と5回も会談している。
またロイターは、日露関係強化の日本側の大きな目的はエネルギー資源だ、と報じている。ロシア側は、次の20年間で石油とガスのアジア向けの輸出を2倍にする計画だ。日本は、原発停止で大量の燃料輸入に頼らなければならない、と両国の思惑が重なることを同メディアは指摘している。
しかし安倍首相の外交努力は、クリミア半島の情勢不安で、日本が西欧諸国の制裁に加担したことで行き詰まった、とブルームバーグはみている。
【米露、どちらにも配慮】
ロシア政府は、ウクライナの問題で、日本がロシアへの制裁を支持していることに怒っている、とブルームバーグは報じている。約2週間前には、予定されていた外務副大臣同士の話し合いをロシア側が断った。
ロシア国営イタルタス通信は11日、1週間の軍事演習が、ベラルーシ、エストニア、ラトビアと国境を接するロシアの西側プスコフで始まった、と報じた。この3国は、ヨーロッパ連合(EU)、北大西洋条約機構(NATO)の加盟国だ。
アメリカと同盟国は、最近のウクライナ情勢に関して、西側諸国に圧力をかけるため演習を行っているとロシアを非難している(ブルームバーグ)。
ロシアとNATO諸国は、ロシアがウクライナ国境の軍備を増強していることで対立している。西側は、ロシアがウクライナ国内の親ロシア派を支援することで侵略を狙っていると非難し、ロシア側はそのような意図はないと否定している。
安倍首相にとって、ロシアとの関係強化は、自身の外交政策の要でもある。ウクライナ問題で同盟国アメリカに同調し、ロシアへの制裁に加担したが、重要なロシアとの関係を損なわないように、米政府の要請よりも軽度の対応に止めている(ロイター)。