南シナ海問題で米中が火花 米比の「挑発凍結」提案を中国一蹴 “手を出すな”と中国紙
東南アジア諸国連合(ASEAN)は、ミャンマーの首都ネピドーで外相会議を開催した。一部のASEAN諸国と中国の間での、南シナ海における対立を巡り、米中の意見が対立。ASEANメンバーではない両国に、メディアの関心が集まった。
【ASEAN諸国も及び腰】
ワシントン・ポスト紙は、南シナ海の問題に関して、法的拘束力を持つ海洋での「行動規範」作成の交渉に中国が応じるよう、ASEAN諸国が団結して圧力をかけることを、アメリカが求めていたと伝えている。
中国は「行動規範」について1年前に話し合うことに同意していたが、その後全く進展はなかった。そこで、今回の会合では、行き詰まった話し合いに息を吹き込むため、関係国が緊張を引き起こす行動を自主的にやめるという「挑発的行為」の凍結をフィリピンが提案。ケリー米国務長官も同調したが、中国は取り合わなかった。対中貿易を重視する他のASEAN諸国も、中国を怒らせることには消極的だったという(ブルームバーグ、ワシントン・ポスト紙)。
【アメリカは勝利と捉える】
結局、「すべての関係者は自制し、事態を複雑化させ、南シナ海における平和と安定と安全を損なう行為を避ける」という内容でASEANとしての共同声明は発表された。中国が名指しされることはなく、アメリカが望んだ「紛争は国際的仲裁により、解決されねばならない」という確固たる宣言にもならなかったが、アメリカ側は共同声明を勝利だと評価しているという(ワシントン・ポスト紙)。
オバマ政権の高官は「これは中国のふるまいに対する批判であり、大きな圧力を与えるもので、近隣諸国との関係が悪化しているというシグナルにもなる」と述べた(ワシントン・ポスト紙)。また、南シナ海の問題は「世界の問題」と言うケリー国務長官も、今回の会合が問題の進展につながると自信をみせたという(ブルームバーグ)。
【中国の主張】
一方、中国新華社の英語版ニュースサイトは、「南シナ海での行動を凍結」というケリー国務長官の提案を「単に非建設的」と批判。アメリカは南シナ海での緊張を誇張し、フィリピンやベトナムに、中国に対し強硬な姿勢を取るよう煽り、平和的解決をより難しくさせていると述べている。
さらに、中国とASEAN全般は固く結ばれビジネスも盛況で、莫大な利益を両者にもたらしているということは、覚えておくに値すると主張。中国と一部のASEANメンバー国の紛争により、今の良い勢いが阻害されてはならないというのは共通の認識だとし、最後にアメリカに痛烈な皮肉を述べている。
「イラク、シリア、リビアで見てきたように、アンクル・サム(アメリカを擬人化した架空の人物)が足を踏み入れ、とても多くの地が大混乱に陥ったというのは、つらい事実である。南シナ海が、次になってはならない」