レアアース規制で敗訴の中国、遺憾表明 時代錯誤の「資源保護」主張認められず

 世界貿易機関(WTO)は7日、中国のレアアース輸出規制が、協定違反にあたると認定した。2010年から、レアアースの輸出に割り当て等の制限を課している中国だが、今後は裁定に従って、その方針を見直さざるを得なくなった。

【規制は不当】
 レアアースは、スマートフォン、ハイブリッド車のバッテリー、ウィンド・タービンから、防衛産業にまで使われ、高い需要がある。ところが、2010年に資源や環境の保護を理由に、最大の輸出国である中国が厳しい輸出割り当てを導入したため、価格が大幅に上昇。輸出規制が、競合する中国企業だけを利することになるとして、日米欧が共同でWTOに提訴していた(ロイター)。

 1審で敗訴した中国は、4月に上級委員会に上訴していたが、WTOは「中国は自らの輸出制限を正当だと証明することができなかった」と最終的に結論付け、敗訴が確定した(ニューヨーク・タイムズ紙)。

【貿易規制の在り方】
 ニューヨーク・タイムズ紙によれば、中国は上訴の際に、天然資源の枯渇を防ぎ、環境を守るため貿易を制限することを許すという、今ではほとんど引用されない国際貿易ルールを持ち出してきたという。これに対し、アメリカは、中国は長い間、規制なしで国内市場向けの生産を許し、他国の製造業を中国に移転させることに一役買ったと反論したという。

 さらに、中国の輸出規制で価格が高騰したことから、企業が代替製品を開発したり、使用量を減らす対策を取ったため、価格が下落。そのあおりを食って、経営が悪化し、操業停止に追い込まれた他国のレアアース生産者もいることを、ニューヨーク・タイムズ紙は報じている。

 アメリカのフロマン通商代表は、「我々がアメリカの労働者とビジネスの権利を守るため、率先して立ち上がるという明確なシグナルとなった」と今回の裁定を評価し、紛争は「一段落」と述べた。

 EUのデグフト通商担当委員も「貿易規制は、外国の競争相手を犠牲にして、国内産業の保護や促進のためには使えないという明らかなメッセージを、今回の裁定が示した」と述べた(ロイター)。

【中国の主張】
 中国新聞網の英語サイトは、「資源や環境に対する圧力で、資源産品の管理を近年強めてきた」という中国商務部のコメントを紹介し、規制があくまでも環境や資源保護のためであったと主張している。

 さらに、世界のレアアース市場で90%を供給する中国は、公害という代償も払っているとし、いくつかの国は豊富なレアアース埋蔵量を持つが、環境を理由に厳しくその生産を制限していると指摘した。

 中国商務部は、今回の敗訴を遺憾としつつも、WTOのルールに則り、公正な競争を保護し、持続可能な開発を保証するため、裁定を評価し、対策を取ると述べている(英語版中国新聞網)。

太平洋のレアアース泥が日本を救う (PHP新書)

Text by NewSphere 編集部