中国市民の「反日ダンス」、海外紙で話題 反日活動強化、韓国に共闘呼びかけも

 今月3、4日に韓国を訪問した中国の習近平国家主席は、現地で行った講演などで中韓が「反日」で共同歩調を取り続けるべきだとする考えを示した。

 韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領との首脳会談では、「日本敗戦70周年」で中韓共同イベントを開くことを提案した。

 ニューヨーク・タイムズ(NYT)、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)などの海外紙は、これをアメリカの主要同盟国である日韓を離反させることを狙った動きだと分析。朴大統領の反日姿勢につけ込み、アメリカから北東アジアの支配権を奪取する中国のしたたかな戦略の一つだと報じている。

【韓国の若者に中韓の「反日」の歴史を熱弁】
 習主席は4日、官僚や政治家を多く輩出するソウル国立大学で学生たちを前に講演を行った。

 NYTなどによると、その中で習主席は、1590年代の秀吉の朝鮮出兵時に、当時の明王朝が朝鮮を支援した件を持ち出した。そして、「(明と朝鮮の兵士は)日本への“敵意”を共にし、戦場に向けて肩を寄せ合って行進した」などと、中韓の反日感情は長い歴史をかけて共有されてきたものだと強調したという。

 習主席は続けて20世紀の日本の「侵略戦争」についても触れた。それについてNYTは「しかし、数世紀前の中国自身による朝鮮半島侵略や、もっと最近の朝鮮戦争では北朝鮮側についたことには一切触れなかった」と皮肉を込めている。
 
 米タフツ大学で教鞭を取る北朝鮮専門家、リ・ソンヨン氏は、「韓国では歴史に疎い若者ですら、明が(当時の李氏朝鮮を)国の崩壊から救ったことを知っている」と、習主席が4世紀前の話題を持ちだした背景を説明する。そして、「この歴史を改めて強調することで、次の世代を担う若者たちの間に親中の種を撒いたのだろう」と分析している。

【日米間軍事同盟に関する中国の狙い】
 WSJは、多くの専門家の見方として「反日」をキーワードに韓国との接近を試みる中国側の狙いは、日米韓の軍事同盟に楔を打ち込むことにあるとしている。その最終的なゴールは、北東アジアでの軍事的・経済的主導権をアメリカから奪取することだという。

 習主席と朴大統領は、実際に面会した際にも「反日」で意気投合した。両首脳はソウル近郊で行われた昼食会の席で、いわゆる河野談話の見直しや集団的自衛権の行使容認に向けた最近の日本に動きについて「失望と懸念の意を共有した」という。韓国政府高官が記者団に語った(WSJ)。

 また、中国外務省は4日、「習主席が朴大統領に、中韓で日本敗戦70周年を記念した共同イベントを開くことを提案した」と発表した。一方の韓国大統領府はこの件に関するコメントを控えている。WSJは、韓国政府内では大統領の反日路線とは裏腹に、アメリカとの関係を犠牲にしてまで中国と接近するのは得策ではなく、アメリカを刺激しかねない過度な「反日」についても自重すべきだとする意見が強いとしている。

【北京では市民による「反日ダンス」も】
 一方、北京では、ナショナリズムを鼓舞する市民のダンスパフォーマンスが連日繰り広げられているという。その中には、中高年女性たちによる「反日ダンス」もあった。NYTの現地特派員が詳しくレポートしている。

 記事によれば、10人以上の女性たちがおもちゃのAK47突撃銃を抱え、太極拳のようなゆるやかなダンスを披露。しばらくして、MCの男性が「日本の悪魔どもを倒せ!」と叫ぶと、旧日本軍の格好をした男がステージに現れた。男はひざまづいて銃を構えるが、女性たちに“撃ち殺されて”舞台を去り、淡々とダンスは続いた・・・という。

 こうしたダンスパフォーマンスは、北京市内のショッピングモール前で、仕事を引退した中高年グループによって日常的に開かれている。内容は反日的なものに限らないが、ほとんどはナショナリズムを強調した振り付けだという。

 NYTによれば、「全ての一般市民に歓迎されているわけではない」というが、日中戦争をテーマにしたダンスは好んで国営メディアに取り上げられているという。同紙は今回の「反日ダンス」も「他のグループに比べてよく組織されているように見えた」と記し、何らかの“当局の意向”が働いたことをほのめかしてしている。

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Text by NewSphere 編集部