“慰安婦像” 米首都近郊にまた設置 日本人の懸念を地元紙報道
米バージニア州・フェアファクス郡庁舎の一角に、あらたな「慰安婦碑」が設置された。記念碑には「韓国、中国、台湾、フィリピン、インドネシア、マレーシア、ベトナム、オランダ、東ティモールから20万人を超える女性が強制的に性奴隷として連行された」と書かれているという。
【その背景は】
今回慰安婦記念碑の設置に向け動いたのは、「ワシントン慰安婦問題連合(WCCW)」という、主に韓国系住民による団体だという。
AFPは、2月にバージニア州が教科書の「日本海」という記載に「東海」という韓国での呼称も併記することを議題にあげた件もふまえ、「韓国系アメリカ人の活動家達は、こうした歴史論争を続々とアメリカ各地に持ち込んでいる」と報じている。
【地元紙の反応は】
地元紙『フェアファクス・タイムズ紙』によると、WCCWの活動に協力した町会議員のグレース・ハン・ウルフ氏は「慰安婦を記憶に残すことは、多くの韓国系住民にとってとても重要なことです」と語っているという。
同紙はこのことについて、「地元の政治家達は、長きに渡る民族間の国際論争に巻き込まれたようだ」と報じている。
同紙は慰安婦問題について「一般的には、第二次大戦中日本の占領下にあった国、主に韓国や中国の女性を日本軍が強制的に連行したと考えられているが、日本ではそう思っていない者も多い」と伝えている。
そうした日本人は、「こうした動きがアメリカの各地で相次いでいるのは、ただの反日プロパガンダだ」との考えであると同紙は報じている。デラウエア在住の日本人サトコ・オドムさんによる「世界には人権問題が多々存在する。日本だけ単独で取り上げて責めるのは公平じゃない」という言葉も伝えている。
なお日本政府は2007年、軍による強制連行を裏付ける直接の記述・証拠はない、と閣議決定している。
【各地の反応は】
韓国の中央日報はこのことを受け、元慰安婦が高齢となっていることを日本人拉致被害者の家族が高齢となりつつある点になぞらえ、「時間が限られているのは拉致被害者家族だけではない。元慰安婦も同じだ」と改めて日本政府を批判した。
ウルフ氏は「記念碑設置の目的は、二度とこのようなことを繰り返さないよう人々の関心を高めることで、日本を貶めるためではない」とフェアファクス・タイムズ紙に語っている。しかしワシントン・ポスト紙によると、駐ワシントン大使館の大鷹正人公使は「日本政府は慰安婦問題の存在を否定しないが、このような記念碑の設置は日韓に余計な摩擦を起こす懸念がある」と発言しているという。
また大鷹公使はこうした活動により日系の子供たちが学校でいじめを受ける可能性があることにも言及しており、そのような悪い影響が大きく出るようであれば大使館として正式に抗議申立を検討すると述べている。
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