北、韓国艦に砲撃か 中国船が衝突の危険を高めている、との海外指摘も

 22日、北朝鮮が韓国海軍の艦艇を狙い、2発の砲撃を行った。艦艇に被害はなかったが、韓国軍は付近を航行中の北朝鮮の警備艇に向け応射。現場近くの延坪島の住民には緊急避難命令が下され、操業中の漁船にも港へ戻るよう指示が出されるなど、緊迫した事態となった。

【報復としての威嚇射撃】
 韓国軍合同参謀本部の発表によれば、事件は海上での事実上の南北境界線である、北方限界線(NLL)の付近で、延坪島から南西14kmほどの韓国側水域で起こった。

 朝鮮日報は、20日に韓国軍の艦艇が、NLLを越えて侵入した北朝鮮の警備艇に警告射撃を加えていたことから、今回の砲撃は「報復の脅し」だと述べている。事実、北朝鮮は翌日になって韓国の行為を非難。「西南戦線で走り回る南の艦艇は、例外なく照準射撃の対象になるだろう」と脅迫していたという。

 韓国の中央日報も、砲弾は韓国艦艇からわずか150mの場所に着弾したものの、艦艇を正確に狙って行われたのではなく、「照準射撃レベルの威嚇射撃だった」とする韓国軍の分析を紹介している。

【北はNLLに不満】
 もともとNLLは、朝鮮戦争後、国連軍により定められたものだ。北朝鮮は、NLLを認めておらず、独自の境界線を引いている。ロイターは、NLLが自国の海岸線を一部覆うように引かれていることへの北朝鮮の不満を示唆し、周辺が常に衝突の場になってきたと報じている。

 最近では、2010年3月に、韓国のコルベット艦が北朝鮮の魚雷らしきもので沈没し、46名が死亡。その年11月には北朝鮮による延坪島攻撃で、4名が亡くなっている。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、専門家の多くが、「南北に再度『流血の対立』が起こるなら、おそらくNLL付近においてだ」と指摘していると述べる。また、近年この海域で違法操業をする中国漁船が増加。それを追って、南北の警備艇がNLL付近を航行することも、偶発的衝突の危険をさらに高めていると報じている。

【タイミングは意図的か?】
 朝鮮日報は、22日の挑発が、韓国政府の安全保障で重要な役割を担う、国家情報院長(フェリー事件での不適切発言で辞任)と国家安保室長(スキャンダルで辞任)の辞表受理が発表された直後に行われたという、ある消息筋の話を紹介し、このタイミングを北朝鮮が意図的に狙ったと見ている。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、辞任した金章洙(キム・ジャンス)国家安保室長は北朝鮮に強硬な姿勢を取っていたが、彼の辞任で韓国の対北政策が変わることはないと指摘。朴大統領は、引き続き「対話の窓は開き、挑発には徹底した報復を」という、現在の二股政策を維持していくだろうと報じている。

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Text by NewSphere 編集部