ロシアは“崖っぷち”? 天然ガス価格交渉、中国で足元を見られる…海外紙分析
ロシアのプーチン大統領は、20日から2日間にわたって中国を訪問した。20日に上海で行われた中露首脳会談後の共同記者会見では、習近平国家主席とともに、戦略的協力関係の強化をアピールした。
【急速な関係強化の背景は】
中国への訪問に先駆け、プーチン大統領は19日、ウクライナ国境からロシア軍を撤退することを発表している。しかし、こうした懐柔発言の対象は、欧米ではなく中国とみられている。オバマ大統領だけでなく、プーチン大統領もまた、アジアに基軸を置きたいという決意表明をしたのだ、とニューヨーク・タイムズ紙は分析している。
2012年の大統領再就任以来、プーチン大統領はアジアに目を向けてきた、と同紙は述べる。ウクライナ危機をめぐる西側諸国との関係悪化以来、中国との関係、特に経済的結びつきは戦略的に最優先となったという。
中国メディアのインタビューに対し、プーチン大統領は「昨今ロシアは中国を貿易パートナーとして最上位に位置づけている。激動の世界経済の中、ロシア中国間の貿易および経済関係の強化は極めて重要だ」と語っている。
【天然ガスの新たな取引相手を求めて】
今回の訪問では鉱業、農業や交通インフラ等様々な面で協力関係の強化が話し合われているが、一番の目的はやはり「長年折り合いがつかないままの天然ガス貿易にまつわる取り決め」だと海外各紙は指摘する。
ウクライナ危機をめぐり、西側諸国がガス輸出の経済制裁を盾に脅してくる中、ロシアには今すぐ「他の選択肢」が必要となった。ロシアはエネルギー資源輸出への依存度が極めて高いため、早急に新たな輸出先を探す必要がある。そして、新たなパートナーとして選ばれたのが、中国だという。
ロシアと中国は、長く不安定な関係にあった。プーチン大統領に関する著書もあるクリフォード・ギャディ氏は、「これは大きなシフトで、中国に向けた動きがどれだけ真剣なものかを表している」とニューヨーク・タイムズ紙に語っている。
またロシアの戦略分析センターの専門家は、「我々には手強い敵国がたくさんいるが、力強い友好国はいない。だからこそ、中国のような大国の支持が必要なのだ」と英ガーディアン紙に語っている。
【より必死なのはどっち?】
しかし、この天然ガス取引における協議自体は、もうここ10年も進められてきたにもかかわらず、いまだ完全な合意に至っていない。その足かせとなっているのが、価格だという。
ニューヨーク・タイムズ紙によると、以前は「天然資源に対する中国側の飽くなき欲求がおのずとこちらに有利な条件をもたらすのを待つ」というのがロシア側の戦略だったという。しかし受け身の戦略はもはや効かないと専門家は分析する。
欧米との関係が日増しに悪化する中、ロシアは”西側諸国に頼らなくてもやっていける”というメッセージを発信する必要がある。そのためには中国との合意が一刻も早く必要なのだ。さらにフィナンシャル・タイムズ紙によると、交渉が長引く中で、ロシアは他の中央アジア地域に天然ガス資源の市場シェアを奪われつつあるという。
最近では、そういったロシアの足元を見た中国が強気な価格譲歩を要求している、と一部の関係者やアナリストは見ているという。ある業界幹部は「とにかくロシアは必死だから、ある程度苦渋の決断も辞さないだろう。中国側がその点を利用するのは間違いないと思う」と同紙に語っている。
ガーディアン紙によると、ロシアのエネルギー政策研究所のウラディミール・ミロフ氏も「最後はロシア側が中国の要求に譲歩を見せるだろう。なぜならロシア側のほうが崖っぷちだから」と分析しているという。