日本の二の舞?中国不動産バブルに陰り サブプライム危機予想のロゴフ氏、中国経済失速リスクを懸念
中国の不動産バブルが崩壊に向かっているという見方が強まっている。野村證券がこのほど発表した調査報告書によると、住宅の過剰供給と融資資金の不足により、不動産市場が崩れ始めているという。
アメリカの著名な経済学者、ケネス・ロゴフ氏をはじめ多くの専門家は、中国バブルの崩壊は「世界経済の最大のリスクだ」と警鐘を鳴らしている。そうした中、ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)は、中国の現状を日本のバブル崩壊と比較する分析記事を掲載した。
【もはや“if”ではない】
野村證券の調査報告書は、「中国の不動産バブルの崩壊は「もはや“if”ではない。市場の修正は既に非常に難しくなっている」と分析する。
また、中国国家統計局は先週末、主要都市で住宅価格の下落が加速していると発表した。調査対象の70都市のうち、4月には前月の2倍の8都市で下落。下落幅の最も大きい杭州市では新築の住宅価格が約3割落ち込んだ。ブルームバーグが報じた。
世界の複数の経済アナリストは、中国のGDPの16%から20%が不動産投資によるもので、それゆえに中国経済は脆弱だと指摘している(ブルームバーグ)。不動産バブルの崩壊は、中国経済全体の崩壊につながりかねないというのだ。
ロゴフ氏は、アメリカのサブプライム危機を予測した知見で、今の中国経済を「かつてないほどアンバランスだ」とみている。そして、主要輸出先である先進諸国の経済成長が鈍化して保護貿易主義に傾いているため、「中国経済の成長モデルは燃料切れになりつつある」と指摘する。英・テレグラフ紙は、こうした見方を根拠に「中国経済が急失速する確率は今や、10年前の10分の1から5分の1に高まった」とするロゴフ氏の主張を伝えた。
【日本のバブル崩壊を反面教師に】
野村證券の報告書は、今日の中国の不動産市場と日本の20年前の状況に多くの類似性が見られるとしている。WSJは、これを軸にした専門家の論説記事を掲載した。記事は、両者の類似性の一つに「不動産ブームの規模」を挙げ、両国とも銀行の過剰融資によって「経済のオーバーヒートを経験した」と記す。
また、不動産市場の悪化によって発生した不良債権に対する「組織的な失敗」の可能性も類似点に挙げる。日本のケースでは、金利などの「調整制度の脆弱さ」と「甘い収支報告」により、「どの金融機関も破産しなかった」と指摘。
不良債権を抱えたまま生き残った“ゾンビ銀行”が存続しつづけた結果、バブル崩壊後の「失われた20年」を生んだとしている。そして、中国の銀行も現在、多くの不動産担保を抱えており、そこに含まれる不良債権の実態を見て見ぬふりをして、目先の利益を追求しているのではないかと指摘する。
同紙は、中国は日本のバブル崩壊時のこれらの失敗を反面教師にするべきだとして、「(不良債権を抱えた)“ゾンビ”を無理に生かし続けるよりも、市場原理に任せて厳しく対処するべきだ」と記事を結んでいる。
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