イギリス、人口当たりの億万長者数で世界一に 実はタックスヘイブン?その要因とは
ロンドンを中心にイギリスに居住する億万長者の人数は、この10年で急速に増えており、今年は100人を越えた。サンデー・タイムズ紙が、5月18日の今年の英国長者番付の発表に先立って概要を発表し、イギリスの各紙が論評を掲載している。
【急増するイギリスの億万長者】
現在イギリスで暮らす億万長者は104人となり、その資産を合計すると3010億ポンドとなる。デイリー・メール紙によれば、人口当たりの億万長者数は世界最多だ。住民60万7692人につき1人の億万長者がいる計算になり、アメリカの102万2475人に1人を大きく上回っている。
イギリス在住の億万長者の人数はここ10年で3倍以上に増大している。テレグラフ紙によると、昨年はイギリス国内に88人の億万長者が居住し、資産合計は2450億ポンドだった。2008年の景気後退以前には、それぞれ75人/2010億ポンド、10年前の2004年には、30人/650億ポンドだった。また、10年前は7億ポンドの資産を所有していれば上位50位に入れたが、現在では17億ポンド必要だ。
104人の内の72人はロンドン在住で、この人数は世界の他のどの都市よりも多い。次点はモスクワの48人、続いてニューヨーク、サンフランシスコ、ロサンゼルス、香港となる。
【外国から流入する富裕層】
イギリスの億万長者のうち、英国生まれは1/3程度だ。上位10人中には1人、20人中にも3人しか生まれついての英国人はいない。資産額トップはインド生まれの兄弟だ。
ガーディアン紙が伝えるところでは、スーパーリッチ層がイギリスでの生活を望む理由として、「文化、金融サービス、好ましい税体系、子供のためのよい教育、友達と会う好ましいライフスタイル」を番付の作成者は挙げている。同紙は「イギリスは今、正式に億万長者のプレイグラウンドとなっている」と評する。
イギリスでは、同国を本拠としない居住者にはイギリス国内での収入分しか課税されない。デイリー・メール紙は、こういった相対的に低い税体系と金融キャピタルとしてのイギリスの名声とが「外国人」居住者を魅了し、ロンドンまたはイングランド南東部の地所の購入を促進していると分析する。
【現状に対する読者の怒り】
ガーディアン紙の読者コメント欄には、以下のように、現状に対する不満や、金銭で政治を支配されることに対する懸念が見られる。
・富裕層と貧困層のギャップは大洋のように深い。そしてさらに大きくなっている。奴らは太った貯めこみ屋で、我々(の生活)はそのために悪くなる。
・公正でない税制が社会にとって害悪となるのは、不公平だからという理由だけではない。巨大な富が自身を守るために政治権力を買う遣り口のためでもある。
また、
・世界中でイギリスがタックスヘイブンだと知られているせいだ。もし自分が億万長者なら、たくさん提供されている抜け道のひとつを利用して、税なんかに煩わされないようにするだろ。
・同胞である人間のことを気にかける必要はない、気にかけるべきは、税の公正な割当を払うこと。不公平な税制(の改正)がイギリスの喫緊の課題だ。
というように、税制改革を求める声も上がっている。
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