北朝鮮で大人気の韓国製チョコパイ、禁止に 自国品の販促狙うも、売れず…
北朝鮮で人気を博していた韓国のチョコパイが、市場から姿を消した。昨今の韓国製品に対する取り締まり強化の影響と見られる。海外メディアは韓国と北朝鮮両国間において象徴的な意味を持つチョコパイについて報じた。
【韓国製品の規制】
ソウルのネット新聞『デイリーNK』によると、北朝鮮内部消息筋の情報では昨今の取り締まり強化により、韓国からのチョコパイを手に入れることが困難になっている。現在は中国製品か自国のものしか流通していない。国内で製造されているものは小さく味も悪いので誰も買わないという。
『デイリーNK』によると、韓国産チョコパイは開城工業団地の北側従業員に間食として渡され、それが市場に出回るようになった。北朝鮮の闇市では10ドル(1000円)もの価値が出る。ある工場長は、北側従業員にスープとスナックを提供しているとCNNに語った。交通機関がなく、北朝鮮から数時間歩いて仕事に来るので空腹だという。仕事に支障が出ないよう1日にチョコパイを2つずつ渡すという。
チョコパイの他にも、韓国製品と疑われる中古衣類や裏取引で流通していた韓国ドラマなどが押収されていることを、消息筋は明らかにした。『デイリーNK』は、「我々式社会主義」を強調する北朝鮮当局が、住民の間で韓国製品の評価が上がることを遮断しようとしているのでは、という見解を示している。
【チョコパイが象徴するもの】
CNNの取材に匿名で応じた韓国開城工団の工場長は、北朝鮮の職員がチョコパイやコカコーラに感銘を受けていたと話す。少しでも資本主義を感じることができたのではないかと、推測する。「悪でしかなかったアメリカが生みだした製品に感銘を受けたということが、目を開かせるきっかけとなるのでは」と、話した。
CNNによるとニューヨークでは今年1月、“The Choco Pie-ization of North Korea”(直訳:チョコパイ化する北朝鮮)という展示が行われた。アーティストのJin Jo Chae氏は、社会を変えるチョコパイの可能性を感じたと話す。南北の考えを変えるきっかけとなる力があると主張した。
リチャード・ロイド・パリー氏はロンドン・レビュー・オブ・ブックスの記事で、洗脳されて隔離された大衆というイメージとは裏腹に、北朝鮮の住民がチョコパイを好む姿からは完全な遮断は不可能であることがうかがえる、と述べた。不可侵と思われていた社会にも、外部からの影響に敏感な要素があることがわかるという。
【チョコパイが喚起する人間性】
ニューヨーク韓国人会のStephen Noerper上席副社長は、北朝鮮についての噂話や憶測、誤聞に欠落している一面をチョコパイが喚起していると話す。「我々と同じ人間としての体験があることを見落としている。北朝鮮の人は我々と同じ人間という生き物で、その99%が生活の向上を望んでいる。一日の終わりにチョコパイを望んでいる」と指摘した。
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