中国ドラマの3分の2は反日…“日本兵を素手で真っ二つ”など荒唐無稽演出へ批判相次ぎ、ブーム後退か
中国のテレビドラマといえば「抗日」「反日」作品が多いと聞く。反日デモが拡大した2012年、年間制作本数は全体の3分の2に達した。しかし、荒唐無稽な演出への批判、当局の規制強化でブームは後退。中国ドラマ界は次の一手を模索している。
【国産ドラマ3分の2反日作品 エキストラ6割「日本兵演じた」】
中国最大の映画・ドラマ撮影所「横店影視城」(浙江省)。広大な敷地に時代劇のセットや関連施設が整備されている。中国・参考消息網によると、12年に受け入れた撮影チーム150組のうち、48組が反日作品を制作。エキストラのべ30万人の6割が「反日作品で日本兵を演じたことがある」と回答。12年に中国で制作されたドラマ約300作品のうち、反日をテーマにしたものは3分の2の約200作品に達したという。
なぜこれほど反日作品が増えたのか。映像関連の人材を養成する国立大学・中央戯劇学院(北京市)の副教授は「反日作品は『政治的に安全』で視聴率を取りやすいから」と語る。また、メディア関係者の1人は「時代劇は当局の規制が厳しく、スパイを扱うとゴールデンタイムに放送できない。反日作品を撮らずに何を撮る?」と話す。
【素手で人間真っ二つ 視聴者批判「ありえない」】
おりしも尖閣諸島(中国名・釣魚島)をめぐる日中対立が激化し、「反日」は安定して稼げるドラマの主流テーマになる。しかし、作品が増えるにつれて過激な描写、荒唐無稽なエピソードが増加。「ありえない」と視聴者の批判を浴びることになった。
農民が「鉄の一撃」で相手を倒したり、日本兵を素手で真っ二つに切り裂いたり。手りゅう弾を戦闘機に投げて撃墜させたり、当時はなかった革ジャン姿の兵士が現代風の髪型でバイクを乗り回したり。あまりの荒唐無稽ぶりに、視聴者は「神劇(神ドラマ)」と皮肉を込めて命名。「歴史や視聴者を馬鹿にしている」などの批判が拡大した。
【中国当局が規制強化も 甘い汁は捨てられず】
これを受け、中国当局も規制を強化。放送事業を管轄する中国国家新聞出版広播電影電視総局は昨年、ゴールデンタイムに放送される反日ドラマの内容を再審査し、問題があれば修正を命じる通達を出した。今年3月の全国人民代表大会(全人代)でも、国産ドラマの審査制度が再三にわたって協議され、規制の動きは強まっている。
しかし、一度知った「甘い汁」はなかなか忘れられないのが人の常。去年は「ホームドラマが話題になった」との報道も出たが、反日ドラマはなくならない様子。今月もスパイドラマ「異鎮(原題)」が「暴力的なシーンが多すぎる」として、当局から修正を命じられた。「スパイ合戦、国賊退治、秘宝奪取」など、刺激的要素満載の作品。製作者は視聴者を引きつける次の一手を探しながら、安全パイの反日ドラマから手を引けないようだ。
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