中国、ベルリンで“異例の”南京大虐殺批判 しかし反日にドイツを巻き込む試みは失敗
中国の習近平国家主席は28日、ドイツ訪問中にベルリンで行った講演で「南京大虐殺では女性や子供を含む30万人の中国人が殺された」と述べ、さらに「日本軍の侵略による中国人死傷者の合計は3500万人にのぼる」とも発言した。中国の国家主席が、公の場で日本を批判するのは、「極めて異例」と報じられている。
これに対し、菅官房長官は30日、「日本軍が南京を攻撃したことは否定しないが、死者の数については様々な意見がある」との政府見解を述べた上で、「犠牲者数について意見の分かれる中、中国の指導者が第三国で日本の歴史批判をするのは非生産的な行為」との批判を表した。
するとさらに31日、今度は中国外交部の洪磊報道官が、菅官房長官の発言に対する強い抗議を示した。
【中国側の言い分】
中国国営新華社通信によると、洪磊報道官は「日本が習主席の発言を批判するなどお門違い」と発言しているという。
新華社通信の報道によると、「南京大虐殺を含む日本による中国侵略はまぎれもない史実であり、あやまちを犯さないためにも歴史を顧みることは大切というのが習主席の主張」と洪磊報道官は述べている。さらに同氏は、日本で今「侵略の歴史を美化する」動きが起きていると懸念。平和を愛する全ての人は警戒せよ、との発言をしている。
【一方日本のメディアは】
産経新聞は、中国側の主張を「いわれなき非難であり、断じて受け入れられない」と報じている。3500万人の死傷者というのは、江沢民元国家主席の反日教育が一方的に生み出した数字であり根拠がなく、また南京大虐殺については中国の一方的な宣伝にすぎない、というのが同紙の見解である。
読売新聞は、南京大虐殺の死者30万人というのは、当時の中国の人口動態からいってあり得ない数字との見方が強い、と伝えており、習主席の強硬姿勢はかつての江沢民を上回る、と述べている。
【ナチへの反省と比較したがる中国】
ロイターは、悪化する日中関係の原因を、中国が「日本は過去を反省しない」と見続けていることによる、と分析している。
また同メディアは、中国政府が昨今「過去を反省するドイツ」と「反省しない日本」という構図を用いたがっている、と報じている。同メディアによると、習主席は講演中、日本軍の南京攻略戦時に中国民間人の保護活動につとめた駐中ドイツ人商社員のジョン・ラーベ氏にも言及し、その行いを賞賛したという。
しかし朝日新聞は、日本批判にドイツを巻き込もうとする中国の狙いは、ドイツ側からも避けられた、と伝えている。習主席はベルリン訪問の際、「ホロコースト記念碑」視察を打診したが、ドイツ政府に拒否された。習主席がメルケル首相との共同会見では日本批判を控えたのも、暗い歴史をむやみに持ち出されたくないドイツ側に配慮したものと思われる、との見解を同紙は示している。
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