香港人「中国人は嫌いだけど、良い収入源。日本人は好きだけど、日本政府は嫌い」

 中国とのボーダーラインが薄れつつある香港と、文化面で日本への親しみを感じながら、根強い反日感情をも持つといわれる香港。どちらも、香港の現実といえるだろう。

 香港大学が行った、「異なる政府や人々に対する感情」に関する調査結果からは、香港人の持つ複雑な対中・対日感情を読みとることができる。

【調査結果の変遷】
 香港市民の声を拾うことを目的に香港大学が行う「The Public Opinion Programme (POP)」は、無作為に選んだ対象への電話インタビューによる調査である。

 POPによると、2013年11月に1000人以上の香港人を対象として行った調査の結果、香港人のメインランダー(中国大陸人)に対する反感情は約32%、日本人に対する反感情は約15%だった。

 過去の調査では、対メインランダーが、2012年5月29%、同11月26%、2013年5月36%、対日本人は、2012年5月8%、同11月13%、2013年5月15%との結果が発表されている。

 多少の波はあるものの、双方とも上昇傾向にあるが、反中感情は反日感情の2倍以上になっている。

 しかし、調査対象を人から政府に移すと、この数字は大きく変化する。

 対中政府に対する反感情は、2012年5月32%、11月25%、2013年5月37%、11月37%であるのに対し、対日政府への反感情は、2012年5月41%、11月56%、2013年5月59%、11月63%と、群を抜いたものとなっている。

 政治と文化、政府と人、対象によって香港人の抱く感情が大きく異なることがわかる。

【対人・対政府で異なる、対日感情と対中感情】
 香港のサウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙は、この調査結果を踏まえ、「メインランダーは、香港にとって重要な収入源ではあるが、粉ミルクの買い占めなど、物価上昇や実生活面での負担ともなっている」と、彼らがメインランダーに抱く感情の二面性について解説した。

 さらに、「この調査を受けた香港人の中に、戦時中に日本の厳しい占領を経験し、負の感情を抱く香港人は少ない」が、尖閣諸島をめぐる対立により「日本政府への反感は急加速している」と、対日本人と対日本政府とで異なる反感情を示した調査結果の原因を分析している。

【調査結果から分かる複雑な香港人感情】
 近年、香港の街で気づくのは、店舗や施設の従業員の第二言語が、英語ではなく北京語へスイッチしてきている点だ。経済的な利益をもたらすメインランダーに対応するためだろう。

 一方メディアでは、国境を越えてやってくるメインランダーたちによる、一部商品の買い占めや、教育・医療関連施設への食い込み・割り込みに対する批判を取りあげることが多い。香港のスーパーで粉ミルクやオムツが品切れとなり、公立の幼稚園や病院がメインランダーであふれていることへの、地元香港人の反感は激しいものがある。

 POPの調査結果は、対中では、香港人の経済人としてのしたたかさと実生活への不安、対日では、文化的な好みと政治的な意見という、それぞれに対する相反する感情があらわれたものといえそうだ。

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Text by NewSphere 編集部