ロシア制裁、日本・EUにとっては“諸刃の剣” 露メディアは“効果なし”と強気

 ウクライナのクリミア自治共和国で行われたロシア編入の是非を問う住民投票の結果を受け、17日、アメリカと欧州連合(EU)はロシアへの制裁手続に入った。編入への動きを支援したロシア議会や軍の人物21人に対し、渡航禁止や資産凍結などの制裁が行われることになる。

【追加制裁を視野に入れる欧米勢】
 今のところ、制裁対象は公人に限られている。アメリカおよびEUは、段階的な措置でロシアの出方を探っており、今後クリミアを編入する動きに出れば追加措置を発動すると表明している、とBBCは報じる。

 今後の制裁としては、世界貿易機関(WTO)や国際通貨基金(IMF)などの国際機関から、ロシアを除籍する方向で動くことなどが考えられるという。さらには、ロシアとの貿易取引自体を禁止するという、よりダイレクトな経済制裁もあり得るとのことだ。貿易の大部分がEU相手のロシアにとっては大きな影響、と同メディアは指摘する。

 しかしそれは同時に、EUにとっても痛手となることを意味する。ロシアとの貿易が遮断されると、天然ガスや原油の多くをロシアからの輸入に頼るEU諸国においては、燃料費の高騰が避けられない。天然ガス資源を自給できるアメリカと違い、EUにとってこの制裁は諸刃の剣となる。追加制裁へ向けたEU勢の賛成を得るのはそう簡単にはいかないだろう、と同メディアは分析している。

【制裁は怖くなくとも複雑なロシア】
 そんな欧米側の思惑を、ロシアも見透かしているようだ。ラジオ局『ロシアの声(The Voice of Russia)』政治解説員ディミトリ・バビチ氏は「欧米の制裁など痛くもない」との見解を示している。

 同氏によると、欧米側が考え得る経済制裁は、あらゆる手が90年代から既に尽くされており、ロシアには耐性ができているという。貿易遮断が欧州の燃料高に繋がることを含め、これ以上の制裁はむしろ相手の方が痛手を負うだけだろう、とあくまで強気の発言だ。

 しかしそれとは別に、ロシア側にもそう簡単にクリミアを受け入れられない事情があるらしい。同氏によると、現在、200万人のクリミア人のうち4分の1が年金生活だという。それをロシアが養うとなると、大統領も渋るかもしれない。そのため結論は先延ばしになる可能性もある、というのが同氏の分析である。

【依然慎重な日本】
 日本は今のところ、欧米勢と足並み揃える素振りを見せつつも、1歩下がって様子見の状態、と英エコノミスト誌は伝えている。

 日本は18日、「査証(ビザ)緩和に向けた協議を停止する」等の制裁実施を発表したところだが、既に追加制裁を発表している欧米勢とは、なお温度差がある。そのような背景について同誌は、EUと同じく燃料資源をロシアからの輸入に頼っていることに加え、北方領土問題解決に向けロシアと良好な関係を保ちたい思惑からの慎重な構え、と指摘する。

 今後の日本については、とりあえず欧米の制裁に同調していかざるを得ないだろうが、結局のところEUも同じ立場ゆえ、燃料問題が深刻なダメージを受ける可能性は低いと分析する。しかし、領土問題のことは一旦お預けとするしかないだろう、との見解を示している。

【中国はロシア寄りか】
 一方、中国はこの件について「中国はあらゆる国の主権と領土を尊重する」とする一方、「複雑な歴史や政治の背景は考慮されるべき」と声明している。

 中国は、ウクライナが欧米寄りに向かう動きは、国内の民主化を煽ると判断した。それは困るので、ロシア側に近い立場をとるだろう、とウォール・ストリート・ジャーナル紙は分析する。そのうえで同紙は、中国を「自由or権威という選択において正しくない側を選ぶ、我々とはお友達でない国」、と厳しく断じている。

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Text by NewSphere 編集部