オバマの作戦勝ち? 計算づくのダライ・ラマ会談のねらいを海外紙が分析
オバマ米大統領は21日、チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世とホワイトハウスにて会談した。両者の会談は2010年、2011年に続く3度目となる。
【中国の言い分】
ダライ・ラマ氏は、チベットの「独立ではなく高度な自治」を求めていると表明している。しかし中国政府は同氏を「独立に向け反政府活動を煽る政治亡命者」と非難。ニューヨーク・タイムズ紙の報道によると、チベット問題を純粋な国内事案と見なす中国政府は、この会談を「内政干渉」と位置づけており、いかなる外国の口出しも受ける筋合いがないとの抗議をしている。またダライ・ラマ氏については「宗教の旗のもと反政府活動を煽り、中国の分裂活動を率いている人物」と断じている。
中国国営テレビ局の中国中央電視台は、この会談について「米中関係にとって大きな亀裂となるのは必須で、中国政府は断固たる抗議を示している」と報道している。
【アメリカの対応】
ニューヨーク・タイムズ紙の報道によると、アメリカ政府は、ダライ・ラマ氏が進める「中道」的アプローチと、中国内における人権と信仰の自由を強く支持することを表明。同氏と中国政府の対話が再開されることを望んでいる旨を示した。しかし同時に、チベットの独立については支持する立場にないことを表明した。
ブルームバーグは、アメリカ政府の姿勢を「中国とはうまくつきあいたい。しかし人権侵害には抗議する」という2つの狭間でバランスを取っている状態、と分析する。
今回の会談は、通常外交上の客人を迎え入れる大統領執務室(オーバル・オフィス)ではなく、主に私的用途で使われる「マップルーム」で行われた。これは中国政府の感情に配慮したものであろうというのが各方面の分析である。
また、政府からは写真が2枚公開されただけで、会談はメディア非公開であった。これも外交状況に配慮したためと思われている。
【アメリカ側の計算】
ザ・タイムズ・オブ・インディア紙は、こうしたアメリカ政府の対応を、「中国を怒らせることのコストを事前に計算した結果」と分析する。
折悪く、日本・韓国・フィリピン等の米同盟国と、中国との関係が、領土問題などにより悪化している。よって必然的に米中間も緊張が高まっている。それだけでも慎重に扱わなければいけない状況な上、さらに中国は1兆2800億ドルにも及ぶ米国債を預かっており、その意見は無視できない。こうした事情から、米政府は中国政府に配慮せざるを得ない、というのが同紙の見解だ。
会談の時期も考慮の上だ。実は2009年、オバマ大統領はダライ・ラマ氏との会合を断ったことがある。そのとき訪中直前だったことから中国政府への配慮と思われており、当時この決断は広く批判された。しかし今回、ケリー国務長官の訪中は先週終わったばかりで、11月のアジア太平洋経済サミットまではほど遠い。
中国は過去、ダライ・ラマ氏と対談した各国トップとの会合をキャンセルした経緯がある。しかし今回は、このような状況から「主要な会合のキャンセルで復讐する」という手法がとれないのだ。
同紙はこの会談を「大統領がダライ・ラマ氏をホワイトハウスにて歓迎 中国を鼻であしらう」と表現している。米各紙は中国との関係悪化のほうが懸念のようだが、同紙は中国への懸念は持ちつつも、なお米政府の作戦勝ちと位置づけている。