なぜマレーシアが札幌雪まつりのスポンサーに? 新たな観光施策を海外紙が論評
2月5日から11日まで開催された札幌雪まつり。今年も国内外からの240万人を超える来場者が、氷点下の厳しい冷え込みの中で、雪の祭典を楽しんだ。
記録的な大雪の影響で、関東からの観光客の空の便は欠航が相次いだが、現地は好天に恵まれ地元客が多かったことに加え、アジア各地からの観光客が例年以上に多かったことが、来場者数が伸びた理由として指摘されている。
特に、マレーシアが札幌雪まつりのメインスポンサーの役を担うなど、東南アジアと北海道が、急速に関係を深めている様子がうかがえた。
しかし、スポンサー国とはいえ、多くのセレモニーがマレーシアの歴史的建造物である「Sultan Abdul Samad Building」上で行われたのには、マレーシア側の観光アピールという狙いがあったようだ。
【東南アジアと日本、観光客数に差】
近年、東南アジアから北海道への観光客の増加が顕著となっている。2012年度には、前年比2.5倍の15,000人が訪れた。直行便が増加したことや格安航空の運航拡大、さらにはビザ発給要件の緩和なども、その傾向を後押ししているようだ。
日本の観光業にとって、成長し続ける東南アジアは魅力的なマーケットであり、観光客数の減少傾向がみられる中国に代わるターゲットとしても注目されている。
今回、雪まつりのスポンサーとなったマレーシアも、東南アジア発展の先頭に立つ国の一つである。日本側の観光関連業者の努力もあり、北海道に興味を持ち、旅行先に選ぼうとするマレーシア人は順調に増えている。
熱帯に属するマレーシアにとって、寒冷かつ雄大な自然を誇る北海道は、日本の中でも特に新鮮な観光地であり、増加傾向は当分続きそうだ。
一方で、マレーシアを訪れる日本人観光客数の増加は、日本を訪れるマレーシア人の増加と比較すると伸び悩んでいるのが現状のようだ。
【日本側のムスリム観光客受け入れ体制整備】
さらに日本では、増える東南アジア観光客に多いイスラム教徒への対応にも乗り出している。それというのも、日本を訪れたイスラム教徒たちと受け入れる日本人の両側から、「食事のタブー」、「お祈りの方向と場所と時間」に関する困惑の声が上がっているためだ。
札幌市内でも、イスラム教徒の食事や習慣への理解を深める活動が広がっている。札幌中心地に開設された「イスラム教徒向けサロン」は、礼拝所を備えた無料休憩所としてイスラム教徒に喜ばれるだけでなく、市内の観光関連業者の間でも、受け入れ実例として関心が向けられているという。
日本各地で広がる、イスラム教徒に対する「おもてなし」を模索する動きが、マレーシアをはじめとする東南アジア各国からの観光客をさらに呼び込みそうな気配だ。
【東南アジアに求められる新しい魅力】
『THE STAR ONLINE』によると、マレーシアが札幌雪まつりのスポンサーに名乗りを上げた理由は、「日本観光市場への、2014年『マレーシア観光年』のプロモーションの一環」だという。
会場では、マレーシア伝統のマレー茶やバティック(ろうけつ染め)の実演も行われ、マレーシアの魅力として紹介されていた。しかし、それらが雪まつりを訪れていた日本人たちを引きつけるに十分だったか、今後札幌や名古屋で行われる予定だとされるプロモーションでどれだけ注目されるか、正直疑問な部分もある。
海外旅行慣れしてきている日本人観光客に、マレーシアという国に興味を持たせるには、これまでとは違ったアプローチによる新たな魅力が必要ではないだろうか。
多くのマレーシア人が観光客として訪れた札幌雪まつり。彼らが寒さや雪像を楽しんだ結果は、今後の観光客数で判明するだろう。
また、今後続く「マレーシア観光年」のプロモーションでは、日本人のまだ知らないマレーシアの魅力が紹介されることを期待したい。