クレディスイス“土曜日には仕事をするな”投資銀行のワークライフバランスは実現可能か?

 昨年10月、過労死で従業員が労災認定された企業名の情報公開をめぐる訴訟で、最高裁は公開を求めていた市民団体の上告を退けた。「ブラック企業と評価され、信用を損なうおそれがある」ためだ。

 厚生労働省によると、日本における過労死は年間約200件だという。日本独特のものと思われていた「カロウシ」だが、海外でも注目を集めている。

 昨年8月、バンク・オブ・アメリカのロンドン支店でインターンとして働いていたドイツ人の大学生が、宿舎のシャワーで死亡しているのを発見された。検死の結果、てんかんによる自然死と確認されたが、過労が原因と考えられている。

 銀行業界の過酷な労働環境に対する批判が高まるなか、投資銀行は次々と新しい労働ガイドラインを発表している。月曜日、クレディ・スイスは、米国、カナダ、ラテンアメリカのジュニア・バンカーに対し土曜日には仕事を休むように通達した。同通達は、進行中でない案件のための会議を土曜日に開かないこと、ジュニア・バンカーが日曜日の真夜中に仕事をする場合は上司に連絡する事を求めている。トップの勤務成績を収めたアナリストのための早期昇格プログラムとジュニア・バンカーに支援を与える指導プログラムも導入された。

【若手人材の繋ぎ止めに必死?メガバンクのあせり】
 次世代の人材環境を改善する動きの背景には、IT企業との人材獲得競争があると、フィナンシャル・タイムズ紙は報道している。

 IT企業はビール専用冷蔵庫から短パン出勤に至るまで、新卒を引き付ける特典を準備している。金融危機以来威信を失い、ボーナスも低くなった銀行業界は苦戦している。

 また、投資銀行業界における過酷な労働環境に対する当局調査も進んでいる。CNNによると、ゴールドマン・サックスのチューリヒ支店は、2013年、従業員の労働時間に関する法律に反しているとして、スイスの労働局により検査された。

【ワークライフバランスは実現するか?】
 金曜日、バンクオブアメリカは、ジュニア・スタッフに毎月最低四回は週末に休みを取るように通告した。ゴールドマン・サックスは「ジュニア・バンカー対策室」や週末労働をしないように求めるガイドラインを導入した。JPモルガンは、ジュニア・バンカーが毎月1度必ず週末に休暇を取れるようにすることを定めた。

 これらの対策により、投資銀行の過酷な労働環境は改善するのだろうか。フィナンシャル・タイムズ紙によると、これらの通達には但し書きがある。「もしバンカーが進行中案件を抱えているなら」や、とか、長時間労働を「禁止」ではなく「しないように求める」などだ。週末中に送信されるEメールに対して“遅れずに”返信することも求められている。若い銀行員が長時間働かされる状態は続きそうだ。

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Text by NewSphere 編集部