熱気球の中国人救助で中国が日本に感謝 関係改善の糸口となるか?

 1日午後、日本の沿岸警備隊が尖閣諸島沖で中国人男性を救助した。付近の中国船に男性の身柄を引き渡し、中国船からは感謝の言葉があったという。尖閣諸島をめぐる領土問題、現職首相の靖国参拝、中国の防空識別圏設定と冷え切った日中関係だが、ここにきて一筋の光明が見えてきたのか。各メディアは今回の事件が、両国が協力したという点において意義があると論じている。

【中国船が日本に感謝の意】
 台湾当局の通報を受けて、日本の沿岸警備隊がヘリコプターで気球を発見、近くで男性も見つかった。身元確認後、日本領海外の中国哨戒艇に身柄を引き渡した。着水地点が明確でないことから、沿岸警備隊は刑事責任を問わなかった。沿岸警備隊によると中国船は、無線で救助の感謝を述べたという。

 救助された男性は、中国南部河北省の料理人Xu Shuai jun氏(35)であることがわかった。水曜日に沿岸の福建省を出発、7時間半ほど飛んだところで、乱気流に巻き込まれて機械が故障したという。尖閣諸島・魚釣島から21キロメートルの沖合で救助された。

【領土問題いたちごっこの報復合戦】
 過去にも、多くの中国人活動家たちが尖閣諸島に上陸しようと試みるなど、民間人の事件が問題を刺激することは度々あった。2010年には、日本巡視船に衝突し破損させた中国漁船船長・船員が逮捕され、中国側の強い反発を招いた。昨年には香港からの中国人活動家たちが、尖閣諸島に上陸し国旗を立てて逮捕された。その数日後には、報復として日本の活動家が島沿岸に泳ぎ着くなど、いたちごっこの報復合戦が続いている。

 2012年、日本政府が、個人所有者から尖閣諸島を購入したことをきっかけに、同年末から中国哨戒艇が、日本領海内である諸島近海に頻繁に侵入するようになった。両国とも戦闘機を配備するなど、武力衝突も懸念されている。昨年中国が新しい防空識別圏を設定したことで関係はさらに悪化した。追い打ちをかけるように、先週木曜日には安倍首相が、首相として7年ぶりに靖国神社を参拝した。中国首脳陣は、安倍首相を受け入れがたい人物と宣言、首脳間の外交関係は凍結された、とガーディアン紙は報じている。

【冷え切った両国間の一筋の光明となるか。各メディアの反応は】
 今回の事件は「熾烈な領土紛争の最中、両国間の協力という希な機会を生んだ」と、ガーディアン紙は論じた。またニューヨーク・タイムズ紙では、度重なる国家間の問題で緊張の高まる中、「今回の気球事件が平和的に解決された」と評価した。その上で、12月に米巡洋艦が、軍事演習中の中国船に衝突しそうになった事例を挙げ、近年の東シナ海での不穏な出来事の中で、今回の事件が異色であると論じた。フィナンシャル・タイムズ紙でも、「両国の協力関係を喚起した」と報じるなど、各紙とも両国に協力関係が生じたことの意義を強調した。

Text by NewSphere 編集部