【韓国メディア】過剰な警戒から冷静な記事まで…自衛隊の弾薬提供めぐり異なる報道姿勢
日本は23日、1万発の実弾を、南スーダンでPKO活動をしている韓国軍に国連を通して供与した。菅義偉内閣官房長官は25日、武器供与の決定は、「緊急で人道的観点」から必要だったと説明した。
これに関し日本政府は、国連と韓国軍の両方から要請があったとしているが、韓国軍は、国連に要請はしたが日本にはしていないと否定するなど、供与に関する詳細は日韓政府で食い違っているようだ。
韓国外交部の趙泰永報道官は24日、韓国軍は「防衛を強化するため、国連に支援を求め、国連を通して弾薬を受け取った。事実はそれ以上でも以下でもない」と発言したという。
【日韓の防衛協力を望むアメリカ】
日本と韓国は歴史問題や竹島の領有権を巡って対立し、関係は冷え込んでいる、とウォール・ストリート・ジャーナル紙が報じている。このような日韓の緊張関係に関し、アメリカは両国の関係改善を望んでいるようだ。
韓国のコリア・タイムズ紙は、アメリカが北朝鮮の核開発を阻止し中国の軍備増強に対抗する「アジアの枢軸」形成という外交方針の下、日韓の軍事協力を検討している、と報じている。
【安倍政権の「積極的平和主義」】
安倍晋三首相は、今回の弾薬の供与は「積極的平和主義」という安全保障方針に基づいたものだとしている。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、同首相が2012年12月の就任以来、自衛隊の強化と平和憲法の改訂を求めてきた、と伝えている。そして最近では、防衛と安全保障の向上により一層強い意思を示しているようだとみている。日本政府は先週、武器輸出禁止の原則再考のための新しい安全保障戦略を承認した。24日には、過去20年近くで最高の増加となる防衛予算草案を閣議決定している。
【韓国メディアの報道姿勢】
韓国の中央日報は、日本はこれまでPKO協力法の解釈において「弾薬提供は想定しておらず、万が一要請を受けても提供しない」という原則を守ってきた、と報じている。しかし、今回の実弾提供によって原則は簡単に崩れ、武器提供を禁ずる「武器輸出3原則」についても「例外認定」の道をつくることになったと指摘している。
同紙は、安倍政権が「韓国軍の危機状況を助けた」という名分と、「積極的平和主義」の必要性を日本国内外にアピールする実利を、運良く同時に手にしたと批判的に報じている。
韓国の朝鮮日報も、日本は今回の事態について、安倍政権が掲げる「積極的平和主義」に韓国が同調したかのように主張するだろうが、そのようなことは絶対にあり得ない、と警戒を隠さない。
一方、コリア・タイムズ紙は、韓国の朴政権が日本に対し、理にかなった謙虚な外交姿勢をとることが重要だろう、と意見している。また同紙は、アメリカのシンクタンクであるヘリテージ財団のブルース・クリングナー氏の意見をとりあげた。同氏は、「国家主義は、戦前の日本帝国主義という負のイメージを想起させるが、日本は単に世界標準となっている政策方針をもっと国政に取り入れようとしているだけだ。中国が見せている攻撃的な外交とは全くかけ離れたものだ」とみている。
【世論を恐れて身動きがとれない韓国政府】
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、PHP総合研究所の金子将史氏の「日本政府は今回の武器の供与で、日韓の関係が少なくとも実務者レベルでは改善することを期待しているのだろう」との推測を取り上げている。ただ、同氏は、一方の韓国政府が、日本にもっと強硬な態度を取るべきという国内世論の反発を恐れているようでもあると観察している。