日印、海上合同演習 「中国の脅威」をにらみ関係強化へ
海上自衛隊とインド海軍の合同演習が、19日から4日間の予定で、インド洋・ベンガル湾で行われている。
1回目の合同演習は昨年6月、東京沖合で実施された。2回目となる今回は、初のインド海域での実施となった。演習には日本の護衛艦2隻とインド軍の艦艇3隻が参加。海賊対策で行われるVBSS(Visit, Board, Search and Seizure)作戦などを合同で行う。
インド海軍は声明で、「演習は相互運用性の拡大に役立ち、両国海軍は将来、海上安全保障の面で行動できるようになる」と発表している。
両国は最近、関係を強化しており、日本の天皇皇后両陛下は11月、日印国交樹立60周年を記念してインドを訪問された。インドのシン首相は今年5月に東京を訪問している。
【インドは中国に対し、国境問題と「真珠の首飾り」戦略を懸念】
日印共同訓練は、海上での中国の脅威が増す中、海上安全保障分野において両国の関係を強化するステップだとアイビー・タイムズは報じた。特に最近、中国艦船が南シナ海で米イージス巡洋艦に急接近したこと、一方的な防空識別圏の設定について両国は懸念を示している。
また、インドは中国と領土問題を抱えており、今年4月には中国軍がヒマラヤ・ラダック地域で国境を越えた所にテントを張ったとして非難。中国側はこれを否定している。さらに中国は「真珠の首飾り」戦略として、インド洋周辺国で港湾インフラ整備に注力。インドはインド洋における中国の存在感の拡大に難色を示しているという。
アイビー・タイムズは、インドは地政学的地位や経済的な潜在力において日本の強力な同盟国で、「中国の脅威」という共通の課題を克服するため、より強固な友好関係を促進すべきだとの見解を示した。
【アジアの2大民主国が、共有する「中国の脅威」と対峙】
同演習は「インドと日本両国の戦略的利益に合致する」と、軍事情報誌IHSジェーンズ・ディフェンス・ウィークリーのジェームズ・ハーディー氏は語る。同氏はウォール・ストリート・ジャーナル紙に対し、「インドにとってはルック・イースト(東方)政策の一環であり、日本にとってはアジアの民主国家の仲間としてのインドとの関係強化という安倍首相の意欲を強調するものだ」と述べている。
また、インドでは台頭する中間層がスズキやホンダ、ソニーなどの日本製品を購入しており、日本にとって重要な市場となっていると同紙は指摘した。
その他、「演習は象徴としての意味合いで非常に重要」「インドは日本とだけでなく他の国々との海上協力を拡大すべきで、これによってインド海軍の信頼性が高まる」という、インド国家海洋財団の元会長バスカール退役海軍准将の見解も同紙は掲載した。