周到な“根回し”のおかげ? 中国と違って韓国防空圏拡大が受け入れられている理由
韓国は8日、防空識別圏(ADIZ)の拡大を発表した。周知期間を置き、正式運用は15日からと宣言されている。韓国国防省は「我々の最優先事項は、地域での偶発的な軍事衝突を防ぐことです」と述べ、民間航空機に影響はないと言明した。
韓国ADIZは南方へ300km以上拡大することになり、中国と係争中の離於島暗礁(中国側呼称は蘇岩礁、英語名はソコトラ岩)上空などを新たに含み、日本ADIZとも重複することになる。ただし、日米中各国から目立った反対はない。
【中国に対抗した拡大】
韓国ADIZ(北朝鮮上空も含む)は、朝鮮戦争中の1951年に米空軍が画定したもので、中国軍に対する防空が目的であった。しかし、日本ADIZにさえ含まれている離於島が含まれないことを問題視する意見があった。ニューヨーク・タイムズ紙は、韓国がそれを放置していたのは、竹島問題を刺激するおそれがあったためだと解説している。
先月、中国が宣言したADIZに離於島が含まれていたことに韓国は抗議したが、聞き入れられなかった。そのことが韓国ADIZ拡大の好機になった、とウォール・ストリート・ジャーナル紙は伝えている。
なお離於島は常時水没した暗礁であり、「領土」紛争に直結するものではない。韓国が実効支配しており、海洋調査施設を建設している。
【中国との違いは、根回しとFIR準拠】
先月ADIZを宣言した中国に対しては、日米を始め各国から強い懸念が表明された。各紙は、韓国は事前に関係各国への本格的な相談を行い、国連の国際民間航空機関が航空交通業務の分担を割り振った「飛行情報区(FIR、韓国の場合は仁川FIR)」に準拠している点を、中国との違いとして挙げている。
6日、バイデン米副大統領の訪韓時にも、ADIZ拡大について朴槿恵大統領と協議があり、バイデン副大統領はこれを支持したと報じられている。日本も「中国の行為とは異なり、我々はあらかじめ理解に達しました。これは日韓関係に当面の問題を生じないでしょう」と声明している。
【韓国メディアの報道】
韓国紙「中央日報」は、韓国がADIZ拡大にあたり摩擦を最小化しようと腐心してきたことを強調している。ADIZ拡大が決定されたのは2日であったが、日韓中の対立調整というバイデン副大統領の訪韓目的に配慮して、帰国後まで発表を遅らせていたのだという。
朝鮮日報はより強硬な論調で、「韓国の領土・領海主権を守る意志を明確に示したという点で象徴的意味が大きい」「国際機関が定めた基準である以上 ・・・ 中日との防空識別圏交渉でも優位に立つことができる」などと評している。こちらは、中国や日本が韓国ADIZ拡大を認めるかどうかは不確実で、軍用機による挑発やADIZ拡大による対抗があれば緊張は高まると警告している。