“調停名人”バイデン米副大統領、日中韓の緊張を緩和できるか?
2日夜、バイデン米副大統領が日本に到着した。日本、中国、韓国を6日間かけて歴訪する予定であり、本来はTPP交渉や北朝鮮問題が目的であったが、中国防空識別圏問題が重要議題になることは避けがたそうだ。
バイデン副大統領は調停者として定評があり、「バイドネーター」の異名を持つという。
【ひとつ、日本をなだめる】
日本航空や全日空は、中国が主張し始めた防空識別圏に当初従う決定をしたが、日本の航空当局からの圧力により、撤回に至っている。ところが中国防空圏にB-52爆撃機を送り込んで挑戦状を叩きつけたはずの米国では、連邦航空局は中国側の要求に従って飛行計画を通知するよう、航空各社に勧告している。
米国は、中国防空圏を認めたわけではないと繰り返しているが、メンツを潰された形の日本が説明を求めるのは必至であり、バイデン副大統領はまずこれを解決しなければならない。予算案問題でオバマ米大統領がサミットを欠席した事実もあって、ニューヨーク・タイムズ紙は「米国はもはやアジア太平洋地域で支配的な軍事的地位を維持する財務能力、下手をすると意志さえも持っていないかもしれない」との不安が日本に沸いており、中国もこれを日米間を分断する材料としてすでに利用し始めている、と報じている。
3日に会談する安倍首相は、「問題について深い議論をしつつ、我々は日米間の緊密な連携で応答したいと考えております」などと語った。ただしフィナンシャル・タイムズ紙は、自衛隊の役割拡大をめざす安倍首相は実際は内心、中国の動きに非常に感謝しているだろうとの専門家の指摘も伝えている。なおニューヨーク・タイムズ紙は、安倍首相が靖国神社参拝を手控えていることを、バイデン副大統領は支持するだろうと見ている。
【ふたつ、中国を問い詰める】
バイデン副大統領は、4日に会談する習近平中国主席と、個人的に良好な絆があるとされている。ただしガーディアン紙は、バイデン副大統領が日中韓各国の仲介を試みるかどうかは不明だと報じている。
副大統領の側近は、中国に軍事的意図についての「明確さ」を求めるだけだと語っていた。しかしバイデン副大統領の日本到着数時間後、米政府は「中国の発表が混乱を引き起こし、事故の危険性を増加させている」などとして明示的な撤回要求を行った、と同紙は報じている。
【みっつ、韓国を引き込む】
歴訪の最後は韓国である。同紙は、やはり防空圏問題で中国と衝突し、航空会社に通知を行わせていない韓国が、自らも防空識別圏を南方に拡大する「最終段階」にあり、中国主張の領域とぶつかるはずだとの地元報道を伝えている。韓国は日本との関係も悪化しているが、「意見交換」「高レベル会談」など、対中政策での協調が期待できるという。