天皇皇后両陛下、53年ぶりにインドご訪問 現地メディアが予想する背景とは
天皇皇后両陛下は11月30日、6日間の滞在予定でインドを訪問された。歴代天皇のインド訪問は初めて。両陛下は、皇太子と皇太子妃であった1960年に、一度インドを訪問されている。
今回のご訪問には、インドのプラナブ・ムカルジー大統領からの招待を受けた森喜朗元首相を含む50人の代表団が同行している。代表団は、大統領やマンモハン・シン首相などインドの指導者たちと会談し、2国間、アジア地域、国際的な問題について話し合う予定だ。
なお、日本からインドへの政府開発援助(ODA)は現在、中国を抜いて最大だ。
【経済面の相互協力強化】
日本とインドの関係は向上している、とインドのエコノミック・タイムズが報じている。今回の両陛下のご訪問に先立ち、シン首相は5月、日本を訪問した。訪日期間中、貿易と投資の分野で協力を進めることなどに合意した。また、日本からの原子力発電設備の輸出についても、話し合いを前進させることを決めている。
インドは、アジア地域での中国との戦略的懸念に加え、日本からの技術や投資を現在よりもさらに多く必要としている、とインディアン・エクスプレス紙は報じている。その代わりに、インドは日本国全体の繁栄と成長をもたらすことになる、日本企業への成長と国際化の機会を提供するのだ、と同紙は相互の利益を説明している。また近年、2国間の貿易は盛んになっており、日本との結びつきが強まっているとの認識がインド国内で高まっているという。
【中国への政治的圧力も?】
タイムズ・オブ・インド紙は、外務省アジア局審議官の谷野作太郎氏のコメントを報じている。同氏は、インドとの関係は良好で中国のように争っている懸案もなく、中印の日本との関係は全く異なるものだ、と述べたという。
同氏は、両陛下のご訪問は中国に対抗しようとする政治的なものではないと説明している。ただしインディアン・エクスプレス紙は、両陛下の外国ご訪問は希なことで、日本政府はこれまでその機会を外交政策転換の現れとして利用してきた、と指摘している。同紙は、両陛下の1992年の中国ご訪問では両国の友好関係を示し、その後尖閣諸島の領土問題が発生するまで、中国への援助額が増大したことを挙げている。
インドは、自国の領土であると主張するヒマラヤ山脈東部のアルナーチャル・プラデーシュ州に関して、中国と主権を争っている。同紙は、インドが中国との関係を含め様々な問題を解決するためにも、日本との関係を強化することが必要だ、と主張している。
【インド側はご訪問を大いに歓迎】
この記事に寄せられたコメントでは、
・両陛下のご来印は、両国の利益を拡大させるものだ。日本へ何度か旅行したが、人々はとても感じがよく、どこでも親切だった。両国に神のご加護がありますように。
など、ほとんどが日本との関係が強まることを歓迎している。同時に、
・インドと日本は、結びつきを強め、お互いに助け合うべきだ。しかし、もし、中国が、国境線の問題を主張しなければ、友好的に接するべき。
・インドは、中国との関係を弱め、日本との関係を強化すべきだ。中国よりも日本のほうが、長い目で見れば、インドの利益につながる。
など、インドの中国を重視した外交政策からの転換を望む意見も多く見られた。