トルコ海底地下鉄は見切り発車?海外メディア懸念
29日、トルコ・イスタンブールにおいて、黒海とマルマラ海(最終的に地中海につながる)を結ぶボスポラス海峡の横断トンネルが開通した。
大成建設が主導する日本・トルコ合弁プロジェクトであり、40億~45億ドルと報じられている費用のうち、日本が10億ドルを出資したという。トルコ建国90周年記念日に合わせたという式典には、安倍首相も出席した。
【夢の大陸間鉄道】
トンネルは全長13.6km、うち1.4kmほどが海底部で、水深56mは世界最深だ。「マルマライ(マルマラ鉄道)リンク」と名付けられた地下鉄が走り、海峡両岸、すなわち「ヨーロッパ」と「アジア」を約4分で結ぶ。
トルコ政府によれば1日150万人を運ぶことが可能で、イスタンブールの慢性的な交通渋滞を2割軽減するという。イスタンブール市街は海峡で分断されており、人口は約1500万人だ。
鉄道路線全体としては76kmになる。トルコ政府は、北京からロンドンまでを結ぶ「鉄のシルクロード」につながるものだと誇らしげだ。地下鉄は最初の15日間、無料運行され、2年で長距離旅客列車も追加され、さらに貨物列車も加わる。
【トルコの悲願、見切り発車との不安も】
海峡横断トンネル計画は1860年、オスマントルコ帝国のアブデュルメジト1世皇帝が提唱して以来、トルコ支配者の悲願であったと各紙は報じている。それだけに、元イスタンブール市長でもあるエルドアン・トルコ首相は、自らの記念碑的偉業と位置付けて完成を急いだようだ。
トンネルが8500年前の古代遺跡層に突入したため、工事は4年遅れとなっていた。これは考古学上重大な発見であったにもかかわらず、エルドアン首相は「ガラクタ」のせいで、と不満を漏らしたという。
不安視されているのは、イスタンブール周辺がプレート境界に近い地震多発地帯であることや、トンネルと鉄道の開通に伴う地価高騰などだ。トルコ政府はマグニチュード9の地震にも耐えると自信を示している(前述の通り、日本も技術協力している)。しかし専門家は、開通に伴う社会・経済的な影響については、全く研究されていないと指摘する。
エルドアン首相は、他に空港、橋梁、原発、運河など、建国100周年を視野に、大型インフラプロジェクトを積極的に行う意向だ。トルコはここ10年で名目GDPを3倍に伸ばしており、100周年までのさらに10年で、世界経済の上位10大国入りを目指しているという。
しかし、こうしたプロジェクトの資金調達が続くのかについて、専門家からは不安の声が上がっている。橋梁工事などは入札が思惑通り集まっておらず、トルコ経済は減速しつつあり、米FRBの量的緩和策縮小も心配、さらにエルドアン首相は今夏のデモ鎮圧で国際社会から不評を買っているためだ。