米国債デフォルトの危機 安全保障と日本経済の見通し

 麻生太郎財務大臣は8日、米国に対し、世界経済に混乱を招き日本の所有する米国債の価値を損なう恐れのある、デフォルト(債務不履行)を回避するよう求めた。

 日本は、中国の1.28兆ドル(約120兆円)に次いで、1.14兆ドル(約110兆円)の米国債を購入している。日本の対外純資産は296兆円であることからも、米国債の保有金額の多さがうかがい知れる。

 米国会は現在、債務枠をめぐって審議が膠着している。10月17日までに、16.7兆ドル(約1600兆円)の負債枠を引き上げることができなければ、世界の株式市場が混乱するであろうとみられている。

 引き上げに反対する共和党のジョン・ベイナー下院議長は、国民皆保険をすすめようとする「オバマケア」などについて、大統領側が譲歩しなければ、債務枠引き上げの法案に賛成しないとしている。

【アジア地域の領土問題に影響は?】
 日本の政府にとって、米国議会の硬直は新たな政治的危機を招くだろう、とニューヨーク・タイムズ紙が報じている。中国との領土問題が加熱しているアジア地域で、米国の存在感が弱まるのではという不安が強まっているためだ。

 バラク・オバマ米大統領は予算問題を理由に、7日からインドネシアで開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)の会合を欠席した。これにより、首脳会合の主導権を握ったのは、中国の習近平国家主席だったようだ。

 米国の不在は、日本にとって頭の痛い問題だ、と同紙は指摘する。日本は、中国との尖閣諸島の領土問題で、アジア地域における米軍の存在により中国を牽制している。日本の一部メディアは、現在米国で起きている政府機関の一部閉鎖に関連して、米国がアジア地域に展開している軍事力を、これから先も維持できるのか疑問を呈している。

 なお日本は8日、来週に予定されていた自衛隊と米軍による日米合同演習を、米国の予算問題で中止になった旨を発表した。

【日本経済の回復に向かい風】
 国際通貨基金(IMF)アジア太平洋局次長のジェリー・シフ氏の、「日本が現在、非常に難しい舵取りをしているということを忘れてはならない。」との発言を、米ニュース専門放送局CNBCが報じている。日本は積極的な金融緩和と、景気刺激策、構造改革などのアベノミクスをすすめる「重要な局面にあり、世界経済の失速、あるいは、世界的金融不安というさらなる「向かい風」を受ければ、より困難を強いられることになる。」と述べた。

 安倍晋三首相が2012年11月にアベノミクスを発表後、円は約20%値を下げた。しかし、米国の政府機関閉鎖による不安を受け、ここ数週間で、約1.5%という数ヶ月ぶり値上がり幅を記録している。

シフ氏は、最近の円の値上がりは、いまのところ大した問題ではないが、より上昇すれば、日本経済に大きな打撃になるだろう、と述べている。

Text by NewSphere 編集部