FRB新議長指名 民主党内での評価は?量的緩和は?人間性は?その実力は?
オバマ米大統領は1月末で任期満了となるバーナンキ連邦準備制度理事会(FRB)議長(59)の後任に、ジャネット・L・イエレン副議長(67)の指名を決めた。正式な指名は9日、米東部標準時午後3時に行われる。下院の承認は必要なく、与党民主党が優勢な上院で承認されれば決定する。承認はすでに濃厚とみられており、米国では株価指数先物が上昇した。
【党の意向を考慮】
オバマ大統領は当初、自身の顧問でもあったローレンス・サマーズ元財務長官(58)を望んでいたが、サマーズ氏は人物面から民主党内で不評であり、9月15日に指名辞退に追い込まれていた。代わって、上院民主党議員らが大統領に推薦署名を提出するなど、党内で人気のあったイエレン氏が浮上することとなった。
ニューヨーク・タイムズ紙は、FRB含め、世界の中央銀行でも初の女性代表誕生となる「チャンス」を活かすべきだとの、民主党の意向も指摘している。また、約30年ぶりの民主党員FRB議長ということにもなる。
党内の支持を重視しただけに上院での承認見込みは濃厚で、共和党票がわずか6票入れば足りるという。金融ハト派(緩和派)である点や、議長職にない方が活躍するとの見方から一部の共和党議員が反対してはいるが、副議長就任時には共和党からも賛成票は集まっている。なお政権当局者らによると、両党の予算攻防により財政が行き詰まっているタイミングでの指名となったことは、単に偶然であるという。
【緩和派の控えめな切れ者】
イエレン氏はカリフォルニア大学教授、サンフランシスコ連銀総裁、クリントン政権顧問、FRB理事などを歴任、10年前には住宅バブルをいち早く警告した実績もある。夫はノーベル経済学賞受賞者のジョージ・アカロフ氏である。
ニューヨーク・タイムズ紙は「どのFRB議長も彼女ほど深く、中央銀行の理論と実践の両方に通じてはいなかった」などと、特に高く評価している。同紙の描写によると物腰が柔らかく、理知をもって穏便に相手を説得することに長け、同僚からは「大きなIQの小さな女」と評されている。政策的には自由市場の効率性を疑い、失業対策を最大の関心事とし、そのためなら多少のインフレは容認すべきだとの意見である。
各紙は量的緩和をいつ縮小するかがまず就任後最大の問題になると見ているが、このような背景のため、現在のゼロ金利・大量資産購入の路線にはバーナンキ現議長以上に積極的であるようだ。また従来から市場とのコミュニケーションを重視しており、緩和縮小時期を巡って今年、バーナンキ現議長の発言が市場を混乱させたのに対して、イエレン氏は約束は守る、と期待してよい、と同紙は評している。