ハイネケンのロゴを中国企業が乗っ取る?
オランダのビールメーカー、ハイネケンは上海見本市で、その商標デザインをミシンの商標として、意に反して使用された。ハイネケンの名前とロゴとを使用したのは、中国のミシン製造企業、呉江市喜力機械工場であった。
中国商務部 はこれまで呉江市喜力機械工場が出願した、ふたつのハイネケンの商標は悪意あるものだとして却下した。しかし、3つ目の商標は、ハイネケン側が取り下げを求めていたが、承認された。
近年、日本でも、地名や地域ブランド、マンガキャラクターなどが、第三者によって、不正に登録される「冒認出願」が問題となっている。
中国の第三者により不正に商標権を取得された場合、企業の権利執行が困難になり、さらには不正に商標権を取得したものから、逆に訴えを提起される危険があるようだ。
【外国企業の中国市場参入の妨げに】
「冒認出願」は、外国企業が、中国で商標を登録する前に、第三者が自己名義で出願・登録してしまうというものだ。商標権の「乗っ取り」とも言える。
ハイネケンの代理人である香港の知的情報センター(SHIPS)のジョー・サイモン氏は、この商標権の乗っ取りについて、外国企業に様々な深刻な問題を引き起こすとの指摘をフィナンシャル・タイムズ紙が取り上げている。
サイモン氏は、「乗っ取りは、事実上、外国企業の中国市場参入や、中国企業による国際的な流通商品を生産することを妨げる。」と述べた。
最近では、米アップルが2012年7月、広東省の深セン唯冠科技との長い商標権を巡る争いの後、中国での販売を開始するため最終的に6000万ドル(約48億円)を支払った事例などがある。
【遅れる中国の商標法整備】
中国では、法規上は、他人の著名な商標を企業名称に使用することを禁じている。仮に登録されても、当局により是正できるとされているそうだ。しかし現実には、審査制度の未整備や、各執行当局の審査基準の不一致などにより、多くの日本企業の商標を含む商号の登録がされてしまっているという。
これに対し、米国とヨーロッパ、そして日本は、知的財産権保護を求め、中国政府に圧力をかけている。
このような動きを受け、中国は9月に商標法を改正した。制作側の法律家たちはこれにより外国企業が、自身の商標を保護しやすくなったと説明している。新しい法律は2014年の5月に発効され、商標法違反者に対する刑罰を重くし、良識的な申請であると証明することを求めるものとなるという。。
専門家は、中国が商標登録に関して以前よりは言行一致がみられるようになった、と中央政府の取り組みをある程度評価している。しかし、いまだ多くの外国企業が中国の地方企業による商標の乗っ取りに悩んでいると指摘している。
2012年の模倣被害調査報告書では、日本企業171社が、中国において、不正な権利取得の事例があると回答している。日本企業の商標を使い、消費者に日本企業の関連会社と誤認させるなど、日本企業のブランドに「ただ乗り」を図ることが目的のようだ。