捕鯨問題進展も? 豪州のアボット新首相は親日姿勢
7日に行われたオーストラリア総選挙で、野党・保守連合(自由党・国民党)が与党・労働党を破り勝利した。得票数は過半数を上回り、約6年ぶりに政権交代が実現する。自由党のトニー・アボット党首が首相の就任することになる。
次期首相に就任するアボット氏は、オーストラリア経済のテコ入れのために、炭素税の廃止や法人税の引き下げを公約にしている。さらに、財政健全化のため歳出抑制を掲げながらも、インフラ充実をうたっている。その一環として、新しい道路の建設に数十億ドルかけ、生産性の向上に取り組む予定だ。
通信インフラでは、前政権が中国からのサイバーテロ攻撃の懸念のため、中国の通信機器メーカー華為(huawei)社による全国ブロードバンドネットワーク(NBN)への設備導入プロジェクトに対する投資を禁止していたが、再検討される見通し。
他方、公約に豪華な「有給育児休暇」や「難民船対策」なども掲げている。
なお、公約に反し炭素税を導入したことや、党内不和により、有権者に支持を得られず大敗したラッド首相(労働党)は、党首を辞任する意向を発表した。
【資源開発ブームに陰り?】
鉱物資源が豊富なオーストラリアは、資源開発ブームもあり、22年連続の経済成長を達成してきた。世界的な金融危機による景気後退も回避できたものの、ブームに陰りがみられる。
民間調査会社によると、オーストラリア資源部門の4-6月期投資は前期比で減少。10年ぶりの2四半期連続減少となった。
これまで、中国やアジア諸国の資源需要に支えられてきたが、中国経済の減速などの影響で、経済成長率が下回り、失業率が上昇している。鉱物資源への過度な依存に見直しが迫られそうだ。
鉱業は、オーストラリアの投資プロジェクト全体の約半分に相当する。さらに、年間国内総生産(GDP)の約8%を占めていたが、2%まで下降するだろうとフィナンシャル・タイムズ紙は報じている。
【アボット氏 宗教信仰が足かせに?】
アボット氏を敬けんなカトリック教徒であり、元神父見習いでもある。
フィナンシャル・タイムズ紙は、マッド・モンク(Mad monk)と称している。あるコメンデーターは、アボット氏が同性婚や人工妊娠中絶に否定的な立場をとっていることを挙げ、「先祖がえり」だと批判的だ。同紙は、アボット氏が有権者に支持され続けるには、宗教的スタンスを軟化させなければならないだろうと指摘している。
【アボット氏は親日姿勢?】
今回の政権交代で、アボット氏は、日本との関係強化も打ち出している。
労働党政権は、日本の調査捕鯨の中止を求めて国際司法裁判所に提訴した。対してアボット氏は、「日本を大いに困惑させた」と提訴に批判的だった。