ノーラン、エイブラムスも支持 コダック復活の鍵は映画館にあり?
米写真用品大手イーストマン・コダックが、19ヶ月ぶりに破産状態を脱した。かつてセルロイドフィルムで名を馳せた同社は、包装や商用印刷などの事業を中心として再編された。
【映画フィルム界に居場所】
しかし、ニュースサイト「thedissolve.com」は、映画用フィルムへの再参入について報じた。同社エンターテイメント&コマーシャルフィルム部門代表のアンドリュー・エベンスキー氏は、「フィルムはいまだ死なず、と見えます。いまだ積極的に望まれており、私どもは市場にそれを提供するためにここにいるのです」と語っている。すでに世界の映画館スクリーンの75%はデジタル化されてしまっているが、エベンスキー氏は、移行率の比較的低い中南米や東欧をターゲットに考えているようだ。
また同サイトは、デジタルには、光量過多に弱い、赤や黒など特定の色合いを苦手とする、といった欠点があることから、それを嫌ってフィルム撮影される映画もなお存在する、と指摘している。
『スター・ウォーズ エピソード7』を監督予定のJ.J.エイブラムス氏や、『ダークナイト』などを手がけたクリストファー・ノーラン氏のように、フィルム撮影にこだわりを持つ映画監督も未だ存在しており、撮影時にはあらゆる注目を集めている。クリストファー・ノーラン氏は以前、IMAXフィルムを使い撮影した『ダークナイト・ライジング』の試写において、フィルム撮影の存続を嘆願していたことも報じられている。
コスト面での問題はあるが、色味などの実用的な理由でセルロイド撮影される映画があることは注目に値する。
【富士フイルムとの違い】
フィナンシャル・タイムズ紙は、富士フイルムとの違いに言及。フィルムカメラ界においてはコダックのほうがはるかに格上だったはずだと前置きしつつも、コダックが5年間で合計35億ドルの赤字を出す間、富士フイルムは赤字を1度しか出さず、純利益16億ドルを上げたと伝える。
コダックはかつて、家畜のゼラチンからセルロイドフィルムを製造するために、自前の牛やその飼料を育てていた時期さえある。
一方、富士フイルムのイメージング事業は過去10年平均で年間1割ペースで縮小。カメラ・フィルム関連技術は化粧品や内視鏡などに応用し、利益は過去10年間、年間平均1%程度の成長であり、売上高はほぼ同じ割合で下落した。
同紙は「富士フイルムとコダックはいずれ、業界衰退に対処するケーススタディとして特徴づけられるだろう」と評している。