「パシフィック・リム」、中国で異例のヒット 中国軍の思わぬ非難とは?
中国人民解放軍の機関紙・解放軍報は23日、公開中の米SF映画「パシフィック・リム」について、「世界中に米軍の理念を広めるための宣伝作品だ」との記事を掲載した。
この映画は、人類が太平洋から現れた怪獣の侵攻を防ぐため、巨大ロボット・イェーガーを開発するストーリー。トロントで撮影されたが、舞台のほとんどが香港とその周辺に設定されている。
人民解放軍のメンバーである筆者は、「怪獣との大事な戦いの舞台を、故意に香港に隣接する南シナ海に設定している。その意図は、アジア太平洋地域の安定維持と、人類を救うという米国の戦略を明示すること」だと主張している。さらに、全てのハリウッド超大作に言及し、「中国の若者の心に西洋の価値を植え付けている」と指摘した。
ギレルモ・デル・トロ監督は、「(本作は)軍の理念や現実世界の政治を吹聴するものではなく、何よりもまず、自分の幼少期の怪獣映画へのラブレターである」と語っている。
なお「パシフィック・リム」の興行収入は、中国では1億ドル以上と米国を上回り、世界では総額4億ドルに達する勢いだという。
海外各紙は、中国では異例の大ヒット作だが、中国軍の好みでないようだと報じた。
【記事への指摘】
ゲーマーによるレビューサイト「IGN」は、この記事の筆者が映画を見たとは思えない、と酷評。筆者はイェーガー・プログラムを「防御壁」と表現し、最後の攻撃について「世界警察として世界を救う米国人の茶番」としている。これは明らかに間違っており、この映画は全世界の結束を高めるための、中国を含む多国籍の取り組みを描いたものだと指摘した。
カナダ放送協会(CBC)は、「ごく一部だが、中国が映画に参加している事実を見過ごしている」「環太平洋防衛軍は、米国人だけでなく世界中の人々で構成されている」という、ブログメディア「コタク」での指摘を掲載した。
【中国軍の懸念】
解放軍報の記事は、「米国映画を見るときは、軍人は目をこらし、観念的浸食を避けるためのファイアーウォールを強化すべき」「より重要なのは、国家の安全と利益を守るための戦闘能力を強化すること」とも主張している。
ガーディアン紙は、2020年までに米海軍の兵力の60%を太平洋に移動するという米国の計画を中国は懸念していると報じた。
【中国の映画事情】
同紙によると、中国の映画市場は2020年までに米国を上回り、世界最大となる見込み。また、増加する富裕層の要求にこたえるため、今後5年間で2万5000軒の映画館をつくる予定だという。
ただ、中国でハリウッド映画は人気があるが、外国映画の公開は年34本に限定されていると指摘した。