スノーデンを追い込む米国の次の一手とは?
暗号化電子メールサービスを提供する米ラバビットが8日、突然サービスを停止した。同サービスは、現在ロシアに亡命中の元CIA職員エドワード・スノーデン氏が利用しているとみられていた。サービス停止は、米国秘密裁判所が命じていた、政府へ自社の顧客に関する情報を提供することを拒否したためのようだ。
同日、オバマ大統領は、アップルのティム・クックCEOや、情報工学者のヴィント・サーフ氏、米通信企業のAT&Tの代表などと会合を持った。会合は、国家安全保障局(NSA)の個人情報監視活動についてや、企業がNSAへの情報提供義務を課されていることで海外での評判と商機を損ねるのでは、という不安の高まりのため開かれたという。
【ラバビットの閉鎖】
35万人の利用者を抱え、安全性が高いことを売りにしていたラバビットの創設者レーダー・レビンソン氏は、「苦渋の決断をせざるを得なかった」とコメントしている。同氏は、「アメリカ国民に対する犯罪に加担するか、ラバビットを閉鎖し、10年近く必死に経営してきた事業から手を引くかしかなかった」と述べた。さらに、NSAの名前を口にしてはいないものの、これまでの経緯を明らかにするため、なんらかの法的な行動に出る予定だとも述べている。
ガーディアン紙では、インターネット上の個人情報保護を目的とする米電子フロンティア財団が、企業が政府の協力を拒否し事業を閉鎖することは、これまでにない不安な事態だ、と懸念していることを伝えている。
なお、NSAの監視活動に協力するいくつかの企業は既に、協力内容を利用者へ詳細に説明できるよう、法的な要請をしている。
このような動きに対し、米司法省は、なにも発言することはないとしている。NSAや米国政府もいまのところコメントを控えている。
【波紋を広げるスノーデン氏の発言】
オバマ政権は、NSAの外国人に関する情報監視が明らかになったことで、米国企業の海外ビジネスに対する不安への対処に追われているようだ。
例えば、アップルは中国市場で販売を開始したが、もし中国の消費者が米国政府による情報監視に不安を抱いたとしたら、売上に影響があるだろうと、ガーディアンは指摘している。
また、グーグルも同じく、クラウド事業で、欧州の企業に遅れをとることになるだろうと報じている。
オバマ大統領は、このような不安の高まりを受け、テロ対策と個人情報に関する保護について、より活発な公の議論を行うことを約束した。実際、8日にはIT企業との会合が行われた。ただしその内容は、まだ明らかにされていない。
また米政府は9日、政府の情報監視活動に関する改善案を発表した。ワシントン・ポスト紙は、「大統領の提案のほとんどは表面的なものだ」とのスノーデン氏の父親の批判を伝えている。なお同氏は、「近いうちに」ロシアを訪れる計画を明らかにしている。