アマゾン流「顧客中心主義」徹底か?ベゾスCEOに買収された米名門紙の行方

 ワシントン・ポスト紙は1877年創刊の老舗であり、ニクソン大統領(当時)を辞任に追い込んだウォーターゲート事件のスクープで知られる。2013年6月には、CIA元職員のスノーデン氏による、米当局監視の暴露を報道していた。

 ベゾス氏は、「日々のワシントン・ポストの経営には関わらない」と述べており、同紙の編集長などは職にとどまる。

 デジタル業界の雄による大手新聞社買収の背景を、海外各紙が報じている。

【ワシントン・ポストの最盛期と現状】
 ワシントン・ポスト紙は80年にわたり、グラハム一族が経営者であった。1993年に最盛期を迎えたが、その後は広告売上などの減少に苦しんでいた。今年の3月には、販売部数が47.5万部にまで落ち込んでいた。編集部に一時期1000人以上いた社員は、2012年には640人より少なくなってしまったようだ。

 4代目のキャサリン・ウェイマウス社主は、買収について、「こんな日が来るとは、私も家族も思ってもみませんでした。」と述べた。

 また3代目ドナルド・グラハム会長は、今回の買収は悲しいことだが、「我々一族が経営権を握っていたことは、ただ単に一族のためではなく、新聞社にとっても、良いことだったとの考えは変わらない。」と述べた。

【期待されるベゾス氏の手腕】
 グラハム氏は、新しい経営者のベゾス氏を申し分ない人物だと評したとフィナンシャル・タイムズ紙が報じている。

 ベゾス氏は1995年にアマゾンを創業、インターネット通販の大企業に成長させた。新聞社買収の経験はないが、4月には、ニュースサイトの「ビジネス・インサイダー」に500万ドルを出資している。

 同氏は社員に対し、「ワシントン・ポスト紙の価値は変わらない。この新聞社は、読者のためにあり続け、オーナーの個人的な利益によらない。」と述べる一方、改革の必要性にも言及した。

 ただ、会社としての基本的な姿勢は読者が求めることを理解することだと、顧客至上主義で企業を成長させた同氏らしい見解を示したと報じられている。

【新聞の新しい時代】
 近年、個人による、経営不振に苦しむ地方新聞社の買収が相次いでいる。

 ニューヨーク・タイムズ紙は今週末、米プロ野球チームボストン・レッド・ソックスのオーナー、ジョン・ヘンリー氏に、傘下のボストン・グローブ紙を7000万ドルで売却した。ニューヨーク・タイムズ紙は、「(利益を産まない)新聞は、もはや商売のためのものではなくなったのだ」との専門家のコメントを取り上げている。

 別の専門家は、アマゾンとの協力事業を予測し、ワシントン・ポスト紙が再び盛り返す可能性があると指摘している。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、ワシントン・ポスト紙のデジタル戦略の発展は、新旧のジャーナリズムをどう融合させるか試みるためのよい機会だ、と報じている。

Text by NewSphere 編集部