オバマ政権はアップルを「ひいき」している?

 米通商代表部(USTR)は3日、米アップル社の「iPhone」旧モデルなどに対する輸入差し止め命令に、拒否権を発動すると発表した。米国際貿易委員会(ITC)は6月、アップル社が韓国サムスン社の特許を侵害したとして、一部製品に輸入販売禁止・排除命令を出していた。拒否権発動の検討期間は60日間で、期限ぎりぎりでの決定だった。米政府がITCの裁定に拒否権を発動したのは1987年以来となる。

 アップル社は拒否権発動を「称賛」すると述べ、サムスン社は「失望」したと述べた。

【消費者と米国経済のため】
 フロマン通商代表は「米国経済の競争条件や消費者への潜在的な害」、および特許権者が「過度のレバレッジ」を得るとの懸念を理由に挙げた。「他の利害関係機関や個人に加え、貿易政策スタッフ委員会(TPSC)や貿易政策検討グループ(TPRG)といった機関との広範な協議の結果」であるとも述べている。

 ITCの裁定に反対していた業界団体らは、製品製造に不可欠な、業界基準設定団体によって監督されたキーテクノロジーの特許は、独占されるべきではないと主張していたと、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は伝えている。

 米国特許商標庁や司法省も、1月の政策声明で既に同様の懸念を表明しており、フロマン通商代表はこうした懸念を「強く共有する」と述べている。

 サムスン社は、アップル社に特許をライセンス供与することを申し出てはいたが、アップル社はライセンス料の支払いを回避しようとしていたと主張している。

【自分に返ってくるブーメラン】
 一方で同紙は、自社技術をコピーしたとする競合他社への訴訟を進めているアップル社にとって、打撃になることも指摘した。

 さらにフィナンシャル・タイムズ紙(英)は、TPPあるいはその他の貿易交渉において、中国やインドなど「米国企業が知的財産権保護の緩さを訴えている」国に対し、知的財産ルールの強化を推進している米政府にとっても、反撃材料として使われてしまうと指摘する。

 ITCのロン・キャス元副委員長も、このような拒否権発動が正当化できるのは、国家安全保障や国の通信インフラの鍵である技術のみであり、「普通の消費者製品をめぐって闘う2つの商業プレイヤーが直接競合しているときに介入するなど、最も正当化しがたい」と、拒否権発動を批判した。

 同紙はまた、米政府はアップル社がアイルランドの子会社を利用した税逃れ問題において議会で追及された際にも同社を積極的に批判しなかったと、米国の重要企業への「ひいき」を指摘している。

Text by NewSphere 編集部