米国経済は本当に改善しているのか?
米商務省は31日、第2四半期のGDP成長率が年率1.7%であったと発表した。低調ではあるが、1月に強制支出削減の影響があった、第1四半期の1.1%よりは改善している。雇用市場の改善、高い家計支出と企業投資、強い住宅部門などが、要因として指摘されている。
米連邦準備制度(FRB)は経済回復がいまだ弱いとして、債券購入プログラムとゼロ金利の維持を決めた。FRBは今後回復が加速すると見ており、2013年のGDP成長率を2.6%、2015年には3.6%などと予測している。
【FRB評価への疑問】
FRBの公開市場委員会FOMCは「経済活動が今年前半、緩やかなペースで拡大した」という声明を発表した。
しかしガーディアン紙は、これまで「適度な(moderate)」とされてきた表現が「緩やかな(modest)」に変わっていることから、バーナンキFRB議長がつい先月、「一般的に言えば、金融情勢が改善している」「ファンダメンタルズは私たちには少し良くなっているように見える」などと、「もっと威勢の良い」発言をしたのともうらはらに、事態は悪化しているのではないかと指摘する。
また、7月の民間雇用が20万に達するなど雇用情勢が改善している割に、成長が遅いことにも疑問がある。専門家は、「新しく雇用された者は何を作っているのでしょう?」と述べている。
さらに他の専門家は、FRBは「どう進むべきか自信のないいくつかの陣営に分かれたまま」だと評しており、政策維持は、単に大きな変更を決断できなかったためかもしれないという。なおバーナンキFRB議長は、来年1月の任期満了が近づいており、9月までに後任指名が予定されている。
【GDP計算方法の改訂】
フィナンシャル・タイムズ紙は、米商務省経済分析局(BEA)がこのたびGDP計算方法を改訂し、1929年の過去データにまで遡って再計算したことを伝えている。このような改訂は、経済状態の把握や経済理論の構築に、大きく影響するという。
改訂点としては、過大評価されていた銀行サービス価値の再評価、従来は製造コスト扱いであった研究開発費や、本、映画、音楽の著作権、不動産仲介手数料などを投資扱いにすること、将来支払われる予定で未払いの年金および利子を計算に入れること、などとなっている。
再計算によると、2012年のGDPは従来計算より3.6%大きくなった。2008-09年の大不況の傷は従来考えられていたより浅く、その後の回復はより強かったという。低いとされてきた個人貯蓄率も上昇したため、同紙は、消費者が支出を維持し易くなったことで「米国の消費の持続可能性についての経済的議論に影響を及ぼす可能性がある」、と指摘している。