中国人民銀、資金供給に踏み切った背景とは
中国人民銀行は30日、170億元(約2700億円)の資金供給に踏み切った。公開市場操作による短期金融市場への資金供給は、2月以来となる(臨時措置は除く)。
過度の金利の上昇を容認しない姿勢を明らかにした形だ。これにより市場に安心感が広がり、上海短期金融市場では同日、中国の短期流動を測る指標となる7日物レポ金利が、4.98%に下がった。株価も0.7%高と値上がりした。
経済成長が鈍化する中国の今後の見通しについて、海外各紙が報じている。
【資金供給に踏み切った背景】
人民銀は、「影の銀行」問題などに対応するため、2月以降は、原則として資金吸収スタンスを続けていた。
しかし、上記に加え、政府から地方銀行に対し強い負債償却圧力がかかっていたこともあり、中国国内の貸出金利は6月に急上昇。短期金利が13%台に上昇したため、人民銀は、臨時措置として個別銀行に直接資金を供給した。
今回の措置の背景にも、一部の銀行が他行への資金提供を抑制するなどにより、じわじわと金利が上昇していたことがある。
【平静を装った(?)声明内容】
同日に発表された共産党政治局の声明文は、あくまで健全な経済状況を強調しているようだ。
声明では、現在の主要な経済指標は、中央政府の目標から大きく外れるものではないとし、成長が失速していることには触れなかった。また、今年上半期は、経済は安定して成長、物価は基本的に安定、雇用状況も概ね安定しているとして、経済の暗い見通しを打ち消すかのような内容だった、とウォール・ストリート・ジャーナル紙が報じている。
しかし、実際には中国経済は失速している。中国の第2四半期GDP成長率は、前期の7.7%から7.5%に鈍化。政府が景気刺激策を導入しなければならないのでは、という議論が起こった。ただし今のところ、大型の刺激策は実施されていない。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、「政府は、小規模の政策を使い、経済のバランスを取ろうとしている」という専門家のコメントを取り上げている。国内消費を促し、輸出と投資に頼りすぎないようにして、経済成長を進めようとしているのだという。実際、李克強首相は、経済の最重要項目は、GDP、インフレ、雇用だと発言している。
【金融市場の自由化へ】
また30日の声明では、政府は金融システムの根本的な改革も行うと約束している。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、6月に行なわれた金融引き締め策が、自由化に向けた第一歩だったと報じている。
ニューヨーク・タイムズ紙は、「ありえないくらいにだらしなく、甘やかし放題だった金融政策が終わりを迎えたということだ」という専門家の見方を伝えている。