ローマ教皇、同性愛の神父を容認か?その背景とは

 ローマ教皇フランシスコは22日から、初めての外遊としてアルゼンチンやブラジルをまわり、各地で熱狂的に出迎えられた。外遊最終日のブラジル・コパカバーナ海岸のミサには、約300万人もの信者が押し寄せたという。教皇は外遊中、厳重な警備を嫌い、親しみやすい雰囲気で人々に接したようだ。

 29日、バチカンへ帰る専用飛行機内で、記者からの質問にひとつひとつ答えた。その際、教皇は、神を求める善良な同性愛信者を、「裁く」立場にないと語った。同性愛者が聖職者となることを容認する姿勢を示した。なお同性愛の行為は「罪」だと述べ、教会の教えを再確認している。

 また、女性が聖職者に就任することについては否定したが、教会組織内で女性による先導的な役割は、もっと拡大するべきだとも発言している。

【時代に呼応した教会】
 ニューヨーク・タイムズ紙は、教皇の発言は、教会を再生させることを目的にしているのなら現実的な見解だ、という専門家のコメントを取り上げている。

 カトリック教会はこれまで、同性愛は神聖な職務を妨げるものとみていた。1986年には、ローマ教皇庁は、同性愛を「客観的な障害」と定義していた。2005年には、前教皇ベネディクト16世が、「根深い同性愛傾向」があると思われる男性が聖職に就くことを正式に禁じた。

 同紙は、これまでの教会の閉鎖主義に比べ、教皇フランシスコは、教会はもっと現実社会とつながるべきと考えているようだ、と同紙は報じている。

 なおロサンゼルス・タイムズ紙が2002年に行った調査では、米国の15%の聖職者が同性愛の傾向を認めていたという。

【教会の抱える課題】
 教皇が取り組まなければならない課題は、山積みだ。例えば、今回外遊したブラジルでは、カトリック教徒が減り、福音派(プロテスタント)が急速に増加しているという。

 また、イタリアのマスコミは6月、教会本部に「同性愛ロビースト」が存在し、組織を操っていると暴露した。教皇はこれに関して、同性愛ロビーストの存在は「問題だ」と認める一方、同性愛者が要職に就くことは、また別の問題だと説明した。

 さらに、バチカン銀行は長年、マネーロンダリングに関する内部監査が十分でないと非難を受けている。

 教皇フランシスコのさっぱりと気さくな人柄と、より質素な教会運営を求める姿勢は、多くの人々が支持しているようだ。その人気は、多くの難題解決に向け、采配を後押しするだろう、とウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じている。

Text by NewSphere 編集部