「コントロール不能」の声も・・・中国が公的債務を「緊急調査」
中国の国家審計署(日本の会計院に相当)は28日、ウェブサイト上で、国務院からの監査実施要請を受け、政府が抱える債務についての会計監査を開始すると発表した。発表では、開始の時期のほかは、規模や目的、結果の公表の有無についてなども触れられなかったが、中央・地方を問わず、全国規模で展開されるとみられている。
折から、経済成長の鈍化と危機の可能性をささやかれる中国。今回、明らかになる債務規模は、世界第二位の経済にとって何を意味するのか。海外各紙がその重みを計った。
【全国規模で「喫緊に」行われる調査】
中国共産党の機関紙である人民日報によると、国家審計署に対して国務院の要請があったのは、26日の午後だったという。しかも、その他の業務を一時的に棚上げして、「ただちに」監査に当たるようにとの要請だった。フィナンシャル・タイムズ紙はこれを、「世界第二位」の経済に内在する金融危機への中国政府の懸念を浮き彫りにするものだと分析している。
中国が、全国レベルで政府の負債額の把握に乗り出すのは、二度目。前回、2011年に発表された統計によると、地方政府の債務総額は2010年末時点で10兆7000億元(約171兆円)で、GDP比25%だった。一方、中央政府の負債額は、GDP比20%未満とされている。
しかし、これらの数字は、「低く見積もられすぎている」というのが定評だった。IMFは今年、中国政府の全負債額はGDP比50%に迫っているとしている。
中国国営新華社通信が伝えたところによれば、国家審計署も、今年の6月始めに行った追跡監査で、2012年末時点で、36の地方自治体による3兆8500億元の借り入れが発覚したと認めているようだ。これにより、負債総額は2010年末よりも12.94%上がることになる。
それでも、中国の負債額は、アメリカや日本など、他の先進国よりもはるかに低い。アナリストは、問題は「額」ではなくて、「近年の急増ぶり」だと指摘している。
【債務急増の背景】
中国の地方自治体は、ほぼ例外なく、世界的な金融危機に見舞われた過去5年間に、減少した輸出額に代わる経済のけん引役として公共投資に頼り、そのために借り入れを繰り返してきた。中央政府は負債額の増加に歯止めをかけようと努力してきたが、「借り入れだのみ」の悪循環に陥った地方自治体を前に、なすすべはなかったという。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、なかには、新規の借り入れが、それ以前の返済に充てられる「自転車操業」が疑われるケースも少なからずあることを示唆している。国家的な経済成長が鈍化するなか、債務不履行に陥る可能性も緊急性を増しているようだ。
フィナンシャル・タイムズ紙は、今年の中国の上級審査官の談として「地方自治体の負債は『コントロール不能』であり、アメリカの住宅市場破綻よりも大きな金融危機を起こす可能性がある」との発言を報じている。
【中国経済の成長鈍化】
中国のGDPの成長率は、2013年4~6月期で、前年同期比7.5%増にとどまった。伸び率は1~3月期の7.7%を下回り、2期続けて鈍化。この流れは、下半期も続くだろうと、多くのエコノミストが予測している。
また今回の「全国調査」は、中央政府が、地方政府の借り入れの現状を把握していないという不透明性をも露呈している。
中央政府は、指導力を発揮し、地方の現状を掌握し、経済成長へのてこ入れができるのか。声明には、今回の調査を「深読み」しないよう求める一文が添えられていたと伝えられる。しかし、今や世界第二位の経済大国の経済危機懸念は、いやおうなく、世界の注目を集めている。