EU、ヒズボラをテロ組織に認定 その背景は?
EUは22日、外相理事会にて、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラを、テロ組織と認定した。対象はヒズボラの軍事部門のみで、レバノン政府の反発や同盟国内に存在する懸念を和らげようとしている。
ヒズボラは、シリア内戦でアサド政権側を支援している。一方EUは、反体制派を支援しており、アサド政権に一層の圧力をかけるねらいがあるとみられる。
反体制派を支援しているイスラエルや米国当局は、EUの決定を歓迎している。両国はヒズボラを既にテロ組織に指定しており、以前はEUを非難していた。
フィナンシャル・タイムズ紙によると、ヒズボラはEUの決定に対し、米国の圧力に屈服したと非難している。レバノン政府もEUの決定に失望を表明している。数日前、EU加盟国に対し、決定の先送りを要請していたからだ。
レバノン政府との関係を悪化させたくないEUは、政治的対話の継続を約束する声明を発表する可能性が高いとガーディアン紙は指摘している。
なお、今回の決定は年2回再検討される予定。
【テロ組織認定の背景は?】
ヒズボラは、昨年7月、ブルガリア東部で起きた爆破テロに関与したと疑われている。この事件では、イスラエル人ら7名が死亡している。ただ、ヒズボラは関与を否定している。
また今年3月には、キプロスで、イスラエル人を狙ったテロを準備していたヒズボラメンバーに、有罪判決がくだされた。
既にヒズボラをテロ組織に認定している英国・オランダに加え、ドイツ、フランスらの後押しで、今回の決定に至ったようだ。
他方、アイルランドは、南レバノン平和維持のため軍を派遣しており、自国軍隊が危険にさらされるかもしれないと懸念を抱いている。
【テロ組織認定の影響は?】
テロ組織認定により、EUはヒズボラの資金集め活動を抑制し、資産凍結も可能になる。とはいえ、個人に対して適用される見込みはないようだ。
実際、今回の措置の影響は制限されるだろうと語っている外交官もいるようだ。ヒズボラは政治部門と軍事部門を有し、表面上別々の組織とはいえ、実際は表裏一体で見分けが付け難い、とフィナンシャル・タイムズ紙は指摘している。
なお、EU内のヒズボラ軍事部門の資金調達活動や資産に関しては、公的にはほとんど情報がないとウォール・ストリート・ジャーナル紙は伝えている。
シリア内戦の泥沼化に至った一因にヒズボラの支援がある。今回のEUの決定で今後のシリア内戦のパワーバランスの行方も注目される。