IMFが指摘する中国経済のリスクとは?
国際通貨基金(IMF)は17日、中国経済についての年次報告書を発表した。各紙は報告が、中国経済の構造的な脆弱化を指摘し、以前よりも強く改革の必要性を訴えていると報じている。
【実態不明のいびつな経済】
報告書は、消費ではなく信用と投資に大きく依存する成長モデルから離れることが「ますます急務」だと述べている。従来のモデルは「持続可能でなく、脆弱性を増しており」、「中国には依然としてショックを緩和する大きなバッファがある一方、安全性のマージンは減少している」という。
特に心配な点は、信用の大部分が規制の掛かった正規の銀行金融ではなく「影の金融システム」を経由していることであり、IMFアジア部門のロトラウアー副局長は、中国は金利自由化を加速することで市場の歪みの根本原因に対処する必要があると述べた。
また、表面化されていないが実際には中国政府には昨年、GDPの45%の債務があり、財政余地は減っているとIMFは試算している。自治体は税収の裏付けなしに債務を重ねており、銀行も実際にはバランスシート上から窺えるより弱いかも知れないという。
IMFは中国の経済成長を今年7.75%、来年7.7%と予測しているが、下振れリスクが最近数週間で増加したと述べている。
【行き場のない中国マネー】
また各紙は、中国の銀行利息が低いうえ、海外への資金持ち出しも年間5万ドルに制限されているため、中国人は国内不動産を投資先に選んでおり、短期的には成長に貢献しているものの、不動産バブルの危険に繋がっているとも指摘する。
成長目標よりもバブルを警戒する中国政府は最近、資本移動の自由化を示唆しているが、今度は中国からの資本流出が大きくなり過ぎるおそれもある。IMFの試算によると、ビッグバンアプローチ(一斉改革手法)をとった場合、外国人が中国に9000億ドルを投資する間に、中国人は海外に2.25兆ドルを送金するとされ、差引き1.35兆ドルの純流出はGDPの15%に相当する。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、中国の金融システムは全く弾力性がなく、グローバル資本フロー変動への備えができていないと、自由化を危惧する専門家の意見も伝えている。また上海や香港で実験的な自由化も試みられているが、これだけでは金融改革には繋がらないとも悲観されている。
ロトラウアー氏は、為替レートを統制せずに市場に任せることなどを提言していると、同紙は伝えている。