アップル、独禁法違反 消費者への影響は?
マンハッタン連邦地裁は10日、米アップルが反トラスト法(独占禁止法)に反して、出版社5社と共謀し電子書籍の値段を不当に釣り上げたとの判決を下した。この裁判は、2012年、米司法省が、アップルと複数の出版社を提訴したもの。出版社側は既に和解に応じたため、アップル社が単独で争っていた。
アップルは、今回の判決を不服とし、控訴する予定だ。
海外各紙は、今回の判決理由と、談合に及んだ出版社の現在置かれている状況を報じている。
【アップルの手法】
アップルは、2010年の「iPad」の販売・「iBookstore」の開設に伴い電子書籍市場に参入した。
当時はアマゾンが90%という圧倒的なシェアを占めており、同社は出版社から10ドルで新書を買い、消費者に9.99ドルで販売するなど、低価格を武器に市場を支配していた。販売価格の決定権はアマゾンにあった。
フィナンシャル・タイムズ紙によると、この時、各出版社は、アマゾンのやり方が事業に悪影響を及ぼすと悩んでいた。値上げのためには一団となって抵抗しなければならないが、それがうまくいかなければ、アマゾンから手痛い仕打ちを受けることになると考えていたようだ。
対してアップルは、出版社が高めに価格を設定し、販売手数料(30%)をアップルに支払う契約を申し出た。これを各出版社は受け入れ、価格の上限と、他の小売業者と価格をすり合わせることを認める取り決めに合意した。
これが販売価格の値上げにつながったと、連邦地裁のコーテ判事は指摘した。
判事は、「アマゾンからの価格決定権を取り戻すため、単独で危険をおかす出版社はないということを理解していたアップル社は、彼らが共同して動きやすいようやり方と環境を提供した。」と述べた。
なおアップル側は、「(同社は)出版業界におけるアマゾンの独占支配を崩し、消費者の選択肢を広げ、市場の刷新と競争を大きく進めた」と主張していた。
【判決の影響は?】
今回の判決は、アップルのこれからの交渉手法を制限する恐れのある厳しい判決だ、とウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じている。判決は、電子書籍だけでなく、音楽や映画など全ての配給者に広く影響があるだろうとも指摘している。
しかし消費者は、判決により電子書籍が安くなる恩恵には浴さないだろうと同紙は推測している。ほとんどの人気商品は、出版社が和解した後、既に値下がりしているからだ。
また消費者は、この裁判にさして関心がなく、アップルの名声に傷が付くことはないだろうとも報じられている。
なおガーディアン紙によると、出版社は直接販売すれば、もっと利益が得られるのだが、アップルやアマゾンのようにDRM(コンテンツの利用を制限するシステム)を使う販売者に頼っている。海賊版が出回ることを非常に恐れているからだという。