北朝鮮が韓国に歩み寄った背景とは?

 北朝鮮と韓国は7日、開城(ケソン)工業団地の操業再開に向けて準備を進めることで、一時的に合意した。
 合意では、韓国の経営者らが10日から開城工業団地で施設の整備点検をすることの他、原料や完成品、備品を韓国に持ち帰ることも認められた。また、その間の身の安全は、北朝鮮側によって保障されるものとした。
 両政府は、話し合いをさらに進めるため、10日に再び協議を行う予定だ。

 ようやく緊張緩和へ一歩を踏み出したかに見える両国政府について、海外各紙は、双方の狙いを報じている。

【歩み寄りを見せた北と南】
 両国は7日、「韓国と北朝鮮は、困難に直面している施設の経営者を救済するため、今回の合意に達し、開城工業団地の生産正常化の重要性について理解を共有した。」と、共同声明を発表した。
 ニューヨーク・タイムズ紙によると、北朝鮮側は、まず韓国人の技術者を工場整備のために施設に戻すことについて話し合うよう主張した。北朝鮮側の代表は、「最も重要なのは、(もうすぐ訪れる)雨期による施設の損傷を避けることだ。」と述べたという。
 これに対し韓国側は、経営者の資金繰りを助けるため、完成品と原料を施設から回収することが先だと主張した。フィナンシャル・タイムズ紙によると、操業停止による韓国企業の損失は9億ドル以上にのぼるという。先週経営者たちは、施設を再開するよう強く両政府に求め、そうでなければアジアの他の地域に拠点を移すことになると警告していた。
 また、政治的理由で「気まぐれに」閉鎖をしないことが操業再開の絶対条件だとの主張を譲らなかった。

 こうした背景もあり、まずは両者ともお互いの主張を受け入れたようだ。

【両政府にとっての意味】
 ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、この事業は北朝鮮にとって「金のなる木」で、年に9000万ドルの労働賃金が北朝鮮政府に直接支払われるという。もし開城工業団地が永久閉鎖することになっていれば、北朝鮮が渇望する外貨獲得の手段を失うだけでなく、海外投資家たちを遠ざけることになるとニューヨーク・タイムズ紙は指摘している。

 また韓国政府にとっては、開城工業団地は、朝鮮半島統一に向けた経済協力政策のうち、北朝鮮が韓国に門戸を開く唯一の足がかりといえる。

 緊張状態からの関係改善は、発足してからそれほど時間が経っていない南北両政権にとって、その能力を測る試金石でもある、とニューヨーク・タイムズ紙は報じている。

Text by NewSphere 編集部