韓国と北朝鮮、協議再開の思惑とは?

 北朝鮮と韓国は4日、政府間協議を6日に軍事境界線上の板門店(パンムンジョム)で行うことに合意した。韓国側によると、協議内容は、開城(ケソン)工業団地の停止中の施設の整備点検、原料と完成品の韓国への出荷と工業団地の建設的な正常化についてなど、制限された内容となる予定だという。開城工業団地は、4月には韓国企業関係者の立ち入りが禁止され、その後完全な操業停止に追い込まれていた。
 両国は、6月に予備会談を持ち、同月12日から2国間協議を行う予定で一旦合意したが、その後協議に派遣する代表者の格について意見が合わず、中止されていた。
 今回の協議は実現するのか、海外各紙が韓国・北朝鮮それぞれの思惑を報じている。

【雨期到来、時間のない操業再開】
 開城工業団地は、両国の国境から北朝鮮側15kmの位置にあり、123の韓国企業が、53,000人の北朝鮮労働者を雇用し操業されていた。
 これは、1998年から2008年にかけて、当時の韓国政府の友好政策推進に伴い導入され続いていた、唯一の南北合同事業であった。北朝鮮にとっては堅実な外貨獲得の手段とも報じられている。
 しかし北朝鮮の核実験などにより両国間の緊張が高まり、さらに北朝鮮が韓米合同軍事演習に強く反発したことから、4月9日には、同施設から北朝鮮労働者が引き揚げられ、事業が停止に追い込まれた。
 フィナンシャル・タイムズ紙によると、それ以来、長引く対立のため、46の韓国企業は完全に撤退することを余儀なくされそうだという。そしてなにより、雨期が始まれば、施設はひどい損傷を受けてしまうと経営者たちは訴えている。
 既に一部の経営者はしびれを切らし、両政府に対し、開城へ戻ることができなければ、施設を解体し、韓国国内かアジアのどこかに生産を移すことを訴えているとニューヨーク・タイムズ紙が報じている。

【北と南の駆け引き】
 北朝鮮は3日、操業再開を強く求める韓国企業に対し、開城への入境許可を出した。
 しかし韓国政府は、政府間の話し合いが先だと受け入れず、6日の実務者協議の提案を示した。これを北朝鮮が受け入れた形だという。
 ニューヨーク・タイムズ紙は、今回の政府間協議は、朝鮮半島の緊張緩和の良い機会になるだろうと報じている。同紙は、もし操業再開が合意すれば、韓国が北との関係改善の前提条件とする「信頼構築」の一歩となるとみている。
 協議の焦点は、工業団地操業再開の条件になるのでは、と推測している。韓国側は、政治的な行き詰まりが経済的な開発を犠牲にしないことを保障しなければ、操業再開はないと主張している。
 一方フィナンシャル・タイムズ紙は、「北は、この手の協議で失うものはほとんどない」「非核化についての国際的な圧力とは、全く関係ない動きだ。」とする専門家のコメントを取り上げた。

Text by NewSphere 編集部