デモ続くブラジル、大統領の支持低下 高まる不満を抑えられるか?
ブラジルでは6月17日以降、汚職追放、交通機関の運賃値下げ、医療サービスの改善などを求めるデモが続いている。
世論調査会社ダッタフォーリャによると、ルセフ大統領の支持率は30%(27,28日調査)で、同月上旬に行った調査から27ポイント下落した。
海外各紙は、同国の政治の課題とデモ参加者の不安を報じている。
【国民の政治への不満】
抗議者たちの不満は様々だが、ほとんどの要因は、無責任な政治家に対するものだとウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じている。
例えば、持ち株が少ないはずの個人投資家が先月、ワールドカップの会場となるカステロンスタジアムの経営権に関して35年間の契約を結んだ。この人物は、リオ州知事であるセルジオ・カブラル氏と友人関係にあり、契約に際しての民間委譲の過程が不透明だ、とブルームバーグが報じている。同州知事は汚職追放運動の標的となっているという。
【国民のニーズに追いつけない公共サービス】
フィナンシャル・タイムズ紙は、デモ参加者の要求のひとつである医療サービスの改善について、現状を詳しく報じている。
まずブラジルでは、医療システム(SUS)の整備が進んだおかげで、幼児の死亡率は、1990年に新生児1000人あたり45人であったものが、2007年には19人と減少。平均寿命は1980年と比べ10歳以上も延び、72.8歳になった。
医療サービスを受ける人の数は、1981年~2008年で、450%と跳ね上がったが、対して圧倒的に医師が不足しているという。
ルセフ大統領は今週、数千人単位で外国から医師を国内に招聘すると約束した。これに対し、医療関係団体は、外国人医師の招聘に反対しており、公的援助の拡大を求めている。
医療システムへの財政支出は、2003年に始まったインフレ対策のため実質的には減少している。そのため資金のほとんどを民間の融資に頼ることとなったが、最近は民間からの融資も減っているという。
同紙は、これは政治の問題であり、政府が公的医療サービスに関して官民の負担のバランスを見直すことが必要と指摘している。
【ルセフ大統領の対策】
ブラジル政府は、連日続くデモに対し、7月24日に政治改革に関する国民投票を実施すると表明した。ルセフ大統領は国民投票について、不満を確実な解決へと導く最もよい方法だと述べている。
これに対し野党は、国民の政治不信を利用し、自党に有利な政策を推し進めようとするものだと非難している。
なおルセフ大統領は、デモ参加者に共感している姿勢を示し、デモは合法であり、自身は改革実行のための国民の代弁者だと標榜している。しかし、大統領は長年政権を握っている与党に属することから、これは詭弁だとの批判もあるという。