EU、米スパイ活動に激怒 米国の弁解内容とは?

 米国家安全保障局(NSA)の請負業者元従業員エドワード・スノーデン氏が暴露した機密文書から、米国がEU機関などに対しても活発にスパイ活動を行っていたことが判明した。ドイツ誌デア・シュピーゲル(電子版)が30日に報じた。EU各国からは非難の声が挙がっている。

【同盟国も標的に】
 デア・シュピーゲルおよび英ガーディアン紙は、暴露文書を解析した結果、以下のようなNSAの活動が判明したと報じている。

・ワシントンのEU外交事務所やニューヨークのEU国連代表団事務所に盗聴器を仕掛け、コンピュータネットワークに侵入していた。
・ブリュッセルの、EU理事会本部が入居するユストゥス・リプシウス・ビルでも盗聴を行っていた。
・文書にはフランス、イタリア、ギリシャ、日本、メキシコ、韓国、インド、トルコといった、同盟国を含む38の大使館や代表団などが標的として挙げられていた。
・英国、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドは特に緊密な同盟国と定められ、重視はされなかった。
・ドイツでは年間5億件の通話やインターネット通信データが収集されていた。

 こうした活動は主に、各国間の不一致点などを探ることで外交材料に利用する目的で行われたという。

【激怒するEUと米国の弁解】
 各紙は、EUの商業団体をも含めたNSAの諜報活動である2000年のエシュロンシステム事件などに言及し、諜報の世界では、同盟国といえどもスパイされることは珍しくないと指摘する。
 しかしEU各国からは厳しい非難が相次ぎ、まもなく開始予定であった米欧自由貿易協定交渉にこのまま突入すべきではないとの意見や、調査委員会設置の動きも出ているという。

 一方、EUやドイツ・フランスなどから早急な説明を求められている米側は、「報道の精度を確認中」と返答しているという。また米国家情報長官事務所は、「外交ルートを通じてEUに適切に対応します」とコメントするとともに、米国の情報収集活動は他国と同様の問題ないレベルである旨を述べている。

【スノーデン氏は今】
 なおスノーデン氏は、現在もモスクワ近郊シェレメチェボ空港のトランジットエリア内に滞在しており、エクアドルなどに亡命打診中と見られる。エクアドルのコレア大統領は「人類史上最大の大規模スパイ作戦」について憂慮を表明したが、バイデン米副大統領から亡命却下を要請されたことや、それに対し、決定を下す前に米国に相談し、またスノーデン氏がエクアドル領内または大使館に入るまでは決定を下さないと約束したことを明らかにした。

Text by NewSphere 編集部