エジプトで反大統領デモが過激化、死傷者も その背景とは?

 モルシ大統領の就任1周年に合わせて、同氏に辞任を求める大規模なデモ活動が6月30日に行われた。世俗・リベラル派が中心となり発足した反大統領運動組織「タマルド」が呼びかけたもので、多くの野党勢力に支持されている。
 モルシ大統領は、2011年の革命で独裁政権が崩壊した翌年、初めて選挙によって選ばれた大統領として期待を集めていた。初のイスラム主義系大統領でもあり、就任以来これといった経済回復を実現できずにいる一方、国家のイスラム化や独裁政治を強化していると反発が強まっている。
 海外各紙は、両派が衝突する様子とともに、反米感情が強まっている点についても報じている。

【歩み寄りを示し、デモを回避できるか】
 反大統領運動がヒートアップする中、モルシ大統領は演説を行い、抗議者は汚職によりエジプト経済を崩壊させたムラバク前大統領を支持する「敵」であり「妨害者」であると批判。ただ、自身も就任以来過ちを犯したことを認め、今後は道を正していくと訴えたとアルジャジーラは報じている。
 モルシ大統領は就任後、大統領令を司法が覆すことができないとする大統領権限を強化する暫定憲法を発表し、猛反発を受け、翌月に撤回措置をとっていた。今後は、全ての政党が参加する委員会を設立して憲法改正について協議することや、イスラム教やキリスト教の指導者が国民の融和にむけて取り組む会議などの実施を提案し、反対派への歩み寄りの姿勢を示した。
 しかし、反大統領派が求めているものはモルシ大統領の退任であり、早期選挙の実施が組み込まれていない提案に意味はないとして、大統領による譲歩を却下したという。

 政府側は、デモ活動は2011年の革命で民主化が進んだことを反映しているとして、平和的な抗議行動は容認するとしている。一方、暴走した場合は軍が出動するとも述べているとニューヨーク・タイムズ紙は報じている。
 一連の騒動に対して、大統領を支持するイスラム主義者らも立ち上がりをみせているようだ。この数日間で、北部ダカリヤ県などでは両者の衝突が起きており、死傷者も出ているという。軍は、エジプトが「暗いトンネル」にはまり込むことを回避すべく、仲介役として自体の沈静化をはかるとしている。

【国民の苛立ちは、間接的に米国へと向かう】
 大統領への反発に付随して、「米国が裏でモルシ大統領を操っている」として、反米感情も高まっていることにウォールストリート・ジャーナル紙は注目している。
 中東における反米感情は珍しくないが、これまで米国が抑圧しようとしてきたイスラム勢力を逆に支援しているとする反発は珍しいという。
 同紙によると、パターソン駐エジプト大使が「モルシ大統領を民意で選ばれた正当な大統領として米国は支持する」と述べ、街頭でのデモや暴力的な活動は苦しむ人々を増やすだけであり、エジプトは秩序を整えるべきだ」と発言したことに対して、反対する活動家から即座に反発を食らっているという。パターソン氏を「幻想を作りあげている悪人」「パーリア(インドカースト制度の最下層民)」「イスラム同胞団のスパイ」などと表現する報道が相次いでいるようだ。

Text by NewSphere 編集部