スノーデン氏のネット監視「暴露」 米中関係に与える影響とは?

 エドワード・スノーデン氏による、米国のネット監視という「暴露」が世界を駆け巡り、同氏が米政府との対決姿勢を明らかにするなか、同氏が香港という中国領を潜伏先に選んだこと、そして、米国による大規模なネット監視網のなかには香港及び中国も含まれていたと公表したことによって、今後の米中の出方と、二国間関係の行方が憶測を呼んでいた。
 これについて13日、ついに動きがあったことを海外各紙は報じている。そして、スノーデン氏の暴露事件が、米中関係にどう影を落としうるかについてそれぞれ分析している。

【中国側の報道】
 今回の事件について、中国政府は概ね、沈黙を守ってきた。中国外務省の華春瑩・副報道局長は、提供できる情報はないとし、中国はハッキング行為者ではなく被害者だ、との主張に終始している模様だ。
 しかし13日、政府系の英字新聞チャイナ・デイリー紙はこのニュースを大きく採り上げ、米中の二国間関係に悪影響を及ぼす可能性を指摘した。ニューヨーク・タイムズ紙が報じた。
 チャイナ・デイリー紙は複数のアナリストの談を引きながら、香港に潜伏中の元NSA職員が暴露した、アメリカの世界的な大規模監視プログラムが、米政府の海外でのイメージと、米中の結びつきに傷をつけることは疑いがない、と報じたという。米国がこれまで、中国によるサイバー諜報活動に警鐘を鳴らし、政府レベルで、その停止を訴え続けてきたことについても、皮肉たっぷりに、「ここ何ヶ月というもの、米政府は中国のサイバー諜報活動を槍玉に上げてきたが、米国内の個人の自由やプライバシーの追及にとって最大の脅威は政府の歯止めのきかない権力であることが明らかになった」と切り捨てた模様だ。
 さらに、人民日報傘下のグローバル・タイムズ紙は、この件について、中国政府が積極的に米政府と対峙するべきだと呼びかけた。同紙は「米政府がスノーデン氏の口封じに走る前に、中国は米政府の説明を求める必要がある」と、強気の姿勢を顕示している。
 
【スノーデン氏と中国の関係に疑惑を呈する米議員】
 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、米連邦議会下院の諜報委員会が、確たる根拠を呈示しないながらも、スノーデン氏の中国との関係に疑惑を呈したと伝えている。
 委員会メンバーの下院有力議員2人は、キース・アレクサンダーNSA長官との3時間に及ぶ会議のあと、スノーデン氏を「反逆者」と呼びつつ、「彼の動機について、コネクションについて、潜伏先について、なぜ、彼の地を選んだのか、どうやって身を隠しているのかについて、そして、中国政府の全面的な協力の有無について、解明しなければならないことが山積みだ」と述べたという。
 一方、これほど過激ではないとしても、スノーデン氏が香港に渡ったことで、膨大な情報が中国の手に渡り、「結果的に」事の重要性は同氏の当初の思惑をはるかに超え、米国に莫大な損害を与えかねないとの懸念を抱く議員は多いようだ。
 
【ネット監視は中国のサイバー諜報活動とイコールなのか?】
 米国内では、利益追従の諜報活動と、テロ被害を防ぐための監視活動とを同視するべきではないとの意見も強いようだ。
 アレクサンダーNSA長官は、そもそも、監視の方法や範囲は非常に「限定的」だと釈明した。効果も高く、ボストン爆破テロ事件の犯人調査においても、このプログラムが役立ったという。
 さらに、ミュラーFBI長官もプログラムは「完全に法を遵守している」と擁護している。
 そのうえで、もしも2001年当時にこのプログラムが確立されていれば、9.11事件は防げた可能性があると、議員に訴えたという。
 しかし、いかに国内で正当性が認められようと、外交の場である、米中の「サイバー諜報問題」において、米国の分が悪くなったことは間違いなく、米政府筋もそのことは十分に理解、懸念している模様だ。

【騒動とは無関係?の香港】
 一方ガーディアン紙は、スノーデン氏をめぐって米中が火花を散らすのとは対照的な、「香港」の落ち着きぶりを伝えている。
 特区政府保安局長を務めた経験のある有力議員、レジーナ・イップ氏は、香港が米国から、スノーデン氏の身柄引渡しの圧力を受けているとの憶測を、「香港政府は(特例ではなく)法にのっとって処理するだろう」と受け流し、米国による監視の標的だと指摘された香港中文大學は、「慎重に調査しているが、監視を受けている様子はない」と発表。
 取材を受けた政治家は、「私たち政治家は、香港当局だろうが、アメリカだろうが、中国だろうが、いつも「監視」を受けているようなもの。そもそも、香港は多くの人が諜報活動のために来る、スパイのメッカだ」と述べたという。

Text by NewSphere 編集部